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毎日ごはんを作ることは…

尊敬する料理研究家の辰巳芳子さん95才。私が料理に興味を持ち、実践し始めたのは辰巳さんの本を読んでからだ。

辰巳さんの本はすべて読んできたけれど、婦人画報に掲載された記事が素晴らしかった。

冷やしたトマトジュースやガスパチョを、夕食に間に合うよう病院に持ってゆきます。父は一口飲んで、大きな溜息をつき、なんとも言えぬ笑顔で私を見つめてくれました。胸に宿るそうした笑顔で、人は生き続け得るのです。愛する者の笑顔は、何ものにもまさる「宝」。終わりの日に、掌中に残るのも、残すのも、こうしたことであると思います。愛する者のために、トマトを買ったり、煮たり、そんな日々は、思うより短いのです。

『Lingkaran vol.2』 2003年8月発行(『辰巳芳子の展開料理 応用編』ソニー・マガジンズ所収)

これは、ほとんど食事がとれない状態の父親のために、四季折々のスープを作り、ガーゼに含ませて病床で食べさせていた時の一コマを綴ったもの。


毎日のごはん作りは、正直しんどいと思う日が多い。それでも家族のために作り、笑顔を見たとき、また明日も作ろうと思える。そして、家族のために作ることは、思うより短い…という言葉が胸に刺さった。

こどもは、あっという間に成長していく。いつまでもずっと、家族にごはんを作ることができるわけではないんだよなぁ…と、当たり前なことが当たり前ではないことに気がつきハッとした。

よし、今日も家族のために、ごはんを作ろう。