「帰らんちゃよか」

#にっぽんの歌 #歌の研究

ばってん荒川さんをご存知だろうか。

熊本を中心に九州で活動してきた役者、タレント、歌手、舞台役者である。

唐突にこの方の名前を検索したくなったのは、九州出身の両親が「あの人元気かな」と話題にしていたからである。

you tubeで検索したらこれが出てきた。

観て、震えた。

たぶん東京へと旅立ち、何十年も経ったころ、年老いた母が息子に宛てた手紙のように思いを歌っている。この、ばってんさんの語るような歌い方や声や表情が心にしみて、毎日まいにち、私はこのyoutubeを観ている。

いや、母は私以上にこの動画にはまり、まいにち観ているらしい。いまは亡き、母の母を思い、またもう戻ることのない九州の故郷を思っているのだろう。

ばってんさんは惜しまれながらもすでに天国へと召された。

「帰らんちゃよか」は同じく熊本出身の島津亜矢さんに歌い継がれ、いまもなお全国のファンを魅了している。

魅了なんてもんじゃない。こころを抉り取られるように、魂をつかみとられるような感覚。このばってんさんの歌には、そんな不思議な感覚がある。

これがいつ収録されたものかは定かではないが、ラストに涙ぐんだかのようにみえるばってんさんの瞳をみると、まるで人生を歌い上げているようで、もはや誰も真似のできない芸術ともいえる。

歌詞はいたってシンプル。「みかんばいっぱい送るけん」とか「それでどうだい都会は楽しかかい」とか、本当に手紙に書いてありそうな、または電話で年老いた母が語るような文言である。

けれどばってんさんが歌うとここまで胸に迫るのは、やはりばってんさんの偉大さを感じずにはいられない。もちろん、メロディも素晴らしい。

こういう名曲、いまの時代でいうなら何だろう、とふと考えてしまう。


追記 2020.06.14 NHK BS 新BSにっぽんのうた にて、先にあげたYouTubeの放送時の番組が流れました。公共の電波で見られたことがうれしい!


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