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夏の終わり

生命を多く孕むせいで血腥い海と生温い潮風にパサつく髪の毛、思わず溜め息が出る程には不快だけどそれこそ醍醐味じゃんって能天気に言われた事を思い出し、頬が緩んでいくのを感じた。膝下までを海に呑まれながら引き裂かれつつある物悲しい闇夜に頭の中を錯乱させる。凪いだ表面には機械油の様な煌めきが零れ落ちている。淡く入り雑じる汚染物質。自分と重ねて悲しくなった。人間の営みが溜めた膿、裸足のまま堤防へと登れば背筋が伸びて息がしやすくなり、景色もずっと良いはずなのに、爪の中に詰まった砂に気を取られ、また、視界が排他的になる。夏が終わってもまた秋が来るだけ。秋用のプレイリストを作りつつ帰ろうと海を後にした。

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夏の思い出

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