情報を正しく選択するための認知バイアス事典
「こんな方にオススメ」
・情報リテラシーを高めたい人
・自分の思考のクセを知りたい人
・情報の偏りに敏感になりたい人
①監修者まえがき
「認知バイアス」とは、偏見や先入観、固定断定や歪んだデータ、一方的な思い込みや誤解などを幅広く指す言葉です。
本書を読み進める頃には、「認知バイアス」の全体像をつかめるような仕組みになっている。
本書が、読者の「認知バイアス」理解ばかりでなく、人生を豊かにするためにお役に立つことを願っている。
②滑りやすい坂論法
妻:司法試験に通らないと弁護士になれないわよ。
息子:そんなのわかっているよ。
妻:弁護士になれないと、お金に困るでしょ。お金に困ると、いい暮らしができないわ。いい暮らしができないと、幸せになれないじゃない。だから、司法試験に絶対合格しないとダメよ!
この議論は、「滑りやすい坂論法」として知られている。
この論法を用いる人は、正しい最初の出発点から、望ましくない結論が導き出されてしまうため、相手に最初の選択が間違っていると迫るのである。
そのため、この論法は希望的観測の節で見る感情に訴える論法との関連も指摘されている。
ここで注目しなければならないのは、用いられている条件文が本当に正しい因果関係に基づいて述べられているかということについてである。
冒頭の「司法試験に通らないと弁護士になれない」は、司法試験に合格しなければ弁護士になれないので、明確な因果関係を表現していると言える。
しかし、その後の「弁護士になれないと、お金に困る」「お金に困ると、いい暮らしができない」「いい暮らしができないと、幸せになれない」という主張に関しては、一概にそこに明確な因果関係があるとは言い切れない。
曖昧な因果関係に基づいていると考えるのが自然である。
たとえば、「弁護士になれないと、お金に困る」は、「弁護士になれば、お金に困ることはない」という内容を含んでいると考えられるが、この条件文に含まれている「弁護士になれば」を「医者になれば」に変えても文は成立する。
このことから、「お金に困ることはない」を引き起こすと考えられるものは、「弁護士になること」だけではないため、「弁護士になれないと、お金に困る」という主張には、何の明確な根拠もないことがわかる。
しかし、「論理の構造」に惑わされ、そこで用いられている条件文の因果関係を精査しきれないとき、誤った論法で導き出された結論であるにもかかわらず、人は説得されてしまうのである。
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