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青天の霹靂55(16進法6)

彼女が残したモノを探して、廉夏たちは預かっていると思われる人の元へと行く。
すると、深川は怖かったと泣く。
それもそうだろう。
まさか彼女が死ぬとは、思わなかったんだ。
彼女に託されたモノを及川に渡す。 
それは、及川宛てに一つ、そこには何故今回の事件が起こったのか、そもそもの彼女の思いが綴られていた。そして、謝罪。
そして、犯人に向けて一つそれはなぜ彼女が気持ちが受け入れられないのかの彼女の真摯な思いが謝罪と共に書き連ねてあり、そして、なぜかここに訪れる人に宛てた手紙が一つ。
彼女には、分かっていた様だ。
ここに誰かが来ると。
だが、でも誰か宛にはなっているが、そこには深川に向けて書かれていた。
こうなると、彼女には初めからわかっていたことになる。
己れが死ぬと。
いや、死にたかったのだろう。
じゃないと、ここまで準備できない。
これじゃあ、被害者と加害者が入れ替わるぞと、廉夏は思ったら、ここに来た者宛ての手紙には真実が書かれていた。
〈こんな選択しかできなかった弱い私を怒って下さい。彼に告白されて、彼なら私の願いを叶えてくれるって思いました。彼には悪いことをしました。私は死にたかった〉
そこまで読んで廉夏は読むのをやめた。
この先は、自分が読んでいいところを越えている。
「これは、あなた宛よ」
深川は少し驚きながら、オズオズと受け取る。そして、礼を泣きながら言う。
〈もし、私が男だったら、もしくは優香が男だったなら、私達は付き合ってることを隠す必要もなかったのかな? ねぇ、どう思う? 私達はただ好きなの? それはいけないことなの? でも、そんなこと関係ない私は優香が好きだった。来世で今度こそ幸せになろうね、優香。先に行って待ってるね〉
そして、深川の元から去る。
「結局、堂々と付き合えないことに、彼女は耐えられなかったのね」
「そうだな、アイツはそう言うとこで、弱いよ」
及川は言う。
「でも、残された彼女がかわいそうよ」
廉夏は怒る。
「どうして、共に闘おうって言ってくれないのかな? 冬眞みたいに」
「たぶん、折れてしまったんでしょうね」
冬眞は静かに分かったように言う。
「冬眞は分かるの? それが。でも、折れたら赦さないからね」
「はい」
と頷く。
「でも、結局彼女の思いだけでしたね。あんなに頭を悩ませたのに」
「そうね。いったい何を遺したかったのかね?」
彼はその思いを利用されただけ。
彼女は、深川を護ったんだ。
それが、彼女なりの、深川への愛だったんだろう? 
でも、それで護られた者の心の痛みは、如何すれば良いのか? 
廉夏には、分からない。

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