見出し画像

「障害者というリスク」

映画「梅切らぬバカ」をネットフリックスで鑑賞。自閉症を持つ男性とその母親のささやかな日常をユーモラスに描く。主演は加賀まりこ、塚地武雅(ドランクドラゴン)。

「障害は不幸ではない。不便である」

30年近く前、乙武洋匡氏のベストセラー「五体不満足」のキャッチコピーとして書かれたフレーズだが、私はあえてこう主張したい。

「障害は不幸ではない。リスクである」

障害はただそれだけで、多くのリスクをはらんでいるものなのだ。

母親にとっても、周囲の人間にとっても。

49歳の息子を抱えた年おいた母親(加賀まりこ)は「親亡き後」というリスクに静かに怯え、笑顔の裏に不安を押し隠して暮らしている。

作業所の紹介でようやく見つけたグループホームも、近隣住民とのとあるトラブルからあっけなく追い出されてしまう。

トラブルの原因が息子自身にあるとはいえ、近隣住民とグループホームがとった対応はあまりにも一方的で、やるせない。

結局、どこまでいっても障害はリスクでしかなく、それ以上でも以下でもない。それは自閉症だろうと、身体障害だろうと同じことだ。

「私がいなくなったら……」

親元を独立するまで、母親から繰り返し聞かされていたから、「親亡き後」というテーマは身につまされる。

全体としてはコミカルだが、親子には劇的な救いが訪れるわけではないし、ドラマティックな展開が用意されているわけでもない。

ただ、後半にかけてはほんの少しだけ希望らしきものが見えてくる……障害という現実を切り取った映画としては、このくらいでちょうどいいのではないか。

90分にも満たない短い上映時間ながら、密度の濃い映画。公民館での上映会でぜひ採用してほしい。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?