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サブスク鉄道でSDGsな町を作る~地方ローカル鉄道を甦らせるために発想を変えてみる~


「これからの時代は発想の転換が必要になりますよ」
 鉄道会社の新人研修の担当講師からこのように言われたことを今でも覚えている。当時から鉄道事業の経営状況は良いとは言えず、特に地方ローカル線の利用者が少なく赤字体質となっていた。

 配属となった現場では、多くの先輩社員から「なんで、うちの鉄道会社に入ったの?」と言われ返答に困った。さらに現在はコロナ禍により全国で路線の廃線議論さえ始まるようになった。

 一方、近年は気象異常が世界中で頻発し、国内でも豪雨災害が毎年のように発生する。マスコミは「脱炭素だ」「SDGsだ」と声高に叫んではいるが自動車社会は相変わらずであり、少しくらい不便でもエコな鉄道を利用しようという動きには至らない。

 先輩たちに返答するために、新人ながらに鉄道利用者を増やす知恵を絞った。沿線人口や列車運行と線路保守に必要な費用を調べて、それこそ発想を転換してひとつのアイディアを考えた。ひと言でいうと「鉄道にサブスク会員制度を取り入れて、鉄道路線を全線に亘り乗り放題にする」というものだ。

 過去に作られた制度が、今の時代に合わなくなったものはたくさんある。鉄道であれば切符を主とした運賃制度だ。車の無かった時代のものだが、乗車の都度にお金で買うことが必要な切符などやめて、会員費で収入を確保すれば鉄道経営が出来ると考えた。夢物語のように聞こえるかもしれないが、鉄道事業が人件費や保守費など、支出に占める固定費率が高いことを考えると、あながち不可能でもないと考えている。

 会員費で収入さえ確保されれば、地方ローカル線の赤字収支を憂う必要はなくなる。全線乗り放題になれば都市部から地方に列車で観光に出かける人は増えるだろう。また、都市部に買い物や遊びに出かけたい地方でこそ会員になりたいと思う人は多いだろう。

 これこそ発想の転換だ。

 会員は「定期」を利用するので、途中下車も自由に楽しめる。町の活性化を考える沿線自治体は、「ぜひ、わが町で降りてみてください」と駅中心の街づくりに励むだろう。鉄道会社は会員勧誘について努力が出来るし、会員が増えれば利益が出る、さらには会員費も下がるだろう。

 鉄道会社、自治体そして鉄道会員の三者で良い方向に鉄道を導けるはずだ。環境と経済の両立を考えなければならない時代に鉄道は最適なものとなる。当時の先輩たちに今、答えたい。

「新しい鉄道を実現するためです」と。

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