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ちゅらら【幻想&ホラー小説】【短編】

2
全2話。幼い頃の美しくも恐ろしい記憶。
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ちゅらら(前編)

ちゅらら(前編)

 一週間、という曲がある。ロシアの民謡だそうだ。幼いころ、童謡が好きだった母が「世界民謡集」なる歌曲レコードを持っていて、一時期朝から晩までひっきりなしに針を落とし続けていた。あんまり執拗に鳴らし続けるので、レコードは早々に擦り切れ、カサカサと粗雑な雑音を交え始めた。それでも母はやめなかった。子供心に私は狂った温曲が流れ続ける我が家に帰るのが嫌でたまらず、自然、友達の家に居つくようになった。私の服

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ちゅらら(後編)

ちゅらら(後編)

 私は目を開くのが恐ろしかった。体を小さく固めたまま、私は声だけで聞いた。
「よし?」
「そうだよ。よしだよ」
 よしの声音が、なんと鼓膜に懐かしく響くことだろう。
 よしと過ごした楽しい日々は、もはや私の中では前世の記憶ほどに遠い。込み上げる涙に、私は唇をかみしめた。
「しょうちゃん、なんで目を瞑っているの?」
 よしの言葉に私は答えるすべもない。
 正直に言えば、見たくないから。けれどそれはよ

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