草原の椅子

昔、都があったここは今や草原
人が生き死に栄華を極めたり
悲しみがのさばったり
その時も空はあり、すべてを見てた
侍は刀を携え、何のために誰のために切るのか自らに問うと、料理に使うくらいが丁度いいんじゃないかなって微笑む
農民の暮らしに踊りは必要だった
皆で輪になり踊る 円循環 円循環
繰り返して創造破壊創造破壊
行動後悔改心行動後悔改心
土の上に在る我は肉体を纏った魂である

今も昔も変わらないこと
ただ偉くなりたいやつらが争い
関係ない人々を巻き込んでしまう
たくさんの土地を支配したいとか
たくさんの人々を支配したいとか
すべての起源を誰も知らないくせに
いつの時代も物語があり、人々を救済した
歴史が繰り返されることを物語は
何度も伝えてくれる なのに
まだ繰り返される歴史に戸惑うぼくらがいる
物語を語り継ぎ、生きる意味を考える
生き物は、便利さと引き換えにゆっくり味わうことを忘れちまったんじゃないか
さりとて 時間は平等にある
今こそ効率の中の無駄をあえて愛する時間を作ろう

ネットで木の椅子を注文して
届いたらすぐに組み立てた
くすんだ茶色の椅子はネットで見た通りだったよ 木よ 椅子を考えた人よ
配達員のおじちゃんよ 
ありがとう そして!大事にするよ
椅子を、昔都があった草原に持っていき
見渡す限り草花だね!な場所に置く
ぼくは椅子に座る
緩やかな風が心地よく
太陽の光はやわらかく
呼吸がだんだん静かになる
ぼくの足が大地を感じ
踵が少しそわそわしてる
母指球に意識を通わすと
最近止まることを忘れてたねって囁いてた
どういうこと? 時折、理解するのに時間が必要なことがある
手の指を数え 視界に映る景色がいつから在って、誰かの生活の一部だったんだと当たり前のことに気づく
ここには、幸せも争いも抱擁もおいかけっこも笛の音色もあっただろう

椅子から立ち上がったらもう違う世界だ
空がオレンジに染まり
今日は餃子をつくり食べようと思う我は
椅子と共に歩き始めた
意味もなく、「ひゃっほー。」と叫ぶと
口に微小な羽虫が入ってきた
ようこそ我が体内へという思考には
ならなかった

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