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読書メモ:「日本の伝統」の正体

基本情報

『「日本の伝統」の正体』
藤井 青銅
2021年1月1日発行

「その伝統、本当に昔からあった?」を調べていく本書。いろいろな「伝統」の成り立ち・歴史を詳細に調べ、2020年を基準に何年前の歴史があるか各項目の末に「伝統の年数」として一つひとつ記載している。(例えば、初詣は、約130年等)
著者は、オードリーのオールナイトニッポンの作家としても有名な藤井青銅さん。本書を出版時に宣伝を見て、気になっており、今回手に取った一冊である。

構成

第一章 季節にすり寄る「伝統」
第二章 家庭の中の「伝統」
第三章 「江戸っぽい」と「京都マジック」
第四章 「国」が先か?「伝統」が先か?
第五章 「神社仏閣」と「祭り」と「郷土芸能」
第六章 「外国」が「伝統」を創る

感想

昔から「伝統」を振りかざされると正直うさん臭さを感じており、その理由の一つが「どれぐらいの歴史をもって伝統と呼んでいるのか?」ということだった。

冒頭に「初詣」が取り上げられているが、思っていたよりも歴史は浅く、川崎大師や成田不動は、恵方と呼ばれる(恵方巻の恵方)に位置しており、江戸時代から参詣は盛んであったが、明治になり、京浜電鉄や送付鉄道が新聞で宣伝しに集客に努めたことが普及の大きな一因であった。

このように一つひとつ丁寧に調査・取材がされており、正体を探っていくと必ずしも今と同じ形で続いているわけではなく、商売上の戦略等で時代とともに作られ、変化しているものが多い。
(本書に記載はないが、ちゃんと変わらずに受け継がれている歴史のある伝統も存在していると著者は最後に触れている)

また、ことわざも日本発ではなく、外国から来ているものがあり、ドラマで話題になった「逃げるは恥だが役には立つ」は、ハンガリーから来たものである。(不勉強で全く知らなかった)
ことわざも時間が経つうちに昔から日本にあったように感じるマジックが働いている。

以前『たけし、さんま、所の「すごい」仕事現場に書かれていたが、所さんが林家正蔵さんの襲名記念に林家の家紋の入った「刀の鍔(つば)」を銀色のラッカー(塗料)で塗装したものをプレゼントした話があった。
鑑定士に確認すると間違いなく本物で100万以上するものだが、塗装されているので価値はなくなってしまったと言われてしまった。

所さんの意図がわからなかった林家正蔵さんだったが、桐箱のフタの裏に直筆のメッセージがあり

「伝統は壊さなければ意味がない」

このメッセージを見て、正蔵さんはめまいがする程の衝撃を受けたことが書かれていた。

「伝統」と言われると守るものという感じがしていたが、本書を読んでそんなに重く考える必要はなく、続けていきたいと思えば続ければいいし、時代とともに変えてしまってもよいし、場合によっては止めてしまってもよいものだとはっと気づかされた一冊であった。


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