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読書メモ:18時に帰る「世界一子どもが幸せな国」オランダの家族から学ぶ幸せになる働き方

基本情報

『18時に帰る 「世界一子どもが幸せな国」オランダの家族から学ぶ幸せになる働き方』
一般財団法人1more Baby 応援団
2017年6月 発行

西ヨーロッパの人口約1,700万人のオランダは、ユニセフの調査によると「世界一子どもが幸せな国」と呼ばれており、なぜオランダの子どもたちが幸せなのか?
その疑問を解消するため、日本の「1more Baby応援団(※)」のメンバーが実際にオランダに出向き、政府、自治体、大学教授、保育所、小学校、一般家庭にヒアリングを行い、まとめた本書。
そこでわかったのは、オランダの働き方・生き方は、「しなやかさ」があるということだった。
他国の働き方・生き方や政策に興味があり、手に取った一冊である。

(※)1more Baby応援団:
「理想の数だけ子どもを産み育てられる社会」を目指して活動している団体である。

構成

Prologue 「幸せ」のためにオランダが選んだ働き方とは?
Chapter.1  生産性を重視した仕事の基本
Chapter.2  オランダ型ワークシェアリングの仕組み
Chapter.3  「同一労働同一条件」が優秀な人材を集める理由
Chapter.4    オランダ式テレワークがもたらした効果
Chapter.5    ソフトワークを実現する「チーム主義」とは?
Chapter.6    社員の「モチベーション」を重視すると企業は成長する
Chapter.7   「世界一子どもが幸せな国」のソフトワーカーの生き方
Epilogue    「2人目の壁」を突破するために必要なこと

感想

日本でも「働き方改革」が叫ばれて久しく、以前と比べればよくなってきてはいるものの普段人事の仕事をしている中で、まだまだ課題が多いと感じている。制度はあっても取得が進まない男性の育児休業、なかなか上がらない年休取得率、また、産休育休を取る際に残る業務の分担問題等そんな課題の参考になる一冊だった。

オランダの「しなやかさ」の大前提として、歴史的な経緯がある。約30年前、天然資源の発見によって産業が弱体化(いわゆるオランダ病)する時期があり、失業率が10%を超えていた。この対策として、1982年にワッセナー合意が政労使で協定された。
ワッセナー合意とは、賃金上昇の抑制、フルタイムワーカーの労働時間短縮、早期退職制度の導入等を政労使で締結したものである。内容もさることながら、この時一番ポイントとなったのは、徹底した話し合いを行い、信頼関係を構築できたことである。

オランダでは、働き方に関する制度は、大企業でも法律で定められた以上の大きな特色はなく、制度で対応できない、記載がないようなことは、会社と社員が話し合いを行い「柔軟に」対応しており、このような「信頼関係」及び「社会的な寛容さ」がある。
例えば、オランダでは、働き方に関して、①フルタイム(週40時間もしくは週36時間)と②パートタイム(フルタイム勤務に対して90%、80%、70%)と選択することが可能で、パートタイムを選択した場合でもフルタイム時と同様の時給が払われる。
そしては、家族・子どもを中心に考えるため、子どもが生まれてからフルタイムからパートタイムに柔軟に働き方を変えて、夫婦共働きを続けていく。

日本でも、国も各企業も頑張ってはきているが、どこかうまくいってないと感じることがあり、それは本書にも記載があるが、日本人はどうしても周囲の目を気にするため、制度ありきでものを考え、誰にでも平等に権利が行き渡るように細かく設定し、例外をなるべく認めないことにオランダとの大きな違いがある。
また、会社と働く人との間で信頼関係が希薄なようにも感じている。昭和と比較すれば、かなり変わってきたとは言え、今でも会社・働く人や上司・部下の関係の根底には、やはり「上下関係」を感じざるを得ない。
(オランダだと、プライベートなことも職場の人に分け隔てなく話すそうである。その結果、家庭で何か問題が起こっても職場の人も事情がわかり、協力してくれる。これが「チーム主義」の一つである)


対等な関係で話し合い、「寛容に」かつ「柔軟に対応」できるような社会・会社は、日本の課題に対する解決策の大きな方向性であり、人事の観点だけでなく、様々な点で非常に勉強になった一冊であった。

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