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読書メモ:日本の絶望ランキング集

基本情報

『日本の絶望ランキング集』
大村大次郎
2023年8月10日発行

日本の各種国際データ(ランキング)を用いて、日本の国際的地位や衰退の実態の具体的な理由を解き明かしていく本書。
定期的に発表される日本のGDPや人口数から順位もさることながら、順位の推移等を見ると、異なって見えてくるのではないかと思い図書館で手にとった一冊。
少しに前にGDPがドイツに抜かれ、日本が5位になるという記事があり、それでもまだ5位なのかと思ったのが一番のきっかけである。ちなみにドイツは、4位になっても高齢者の増加等で将来が明るいわけではなくむしろ不安の方が大きいという記事だった。

構成

第1章 社会インフラは途上国並み
第2章 病院は多すぎ医者は少なすぎ・・・いびつな医療界
第3章 なぜ日本経済は中国に喰われたのか?
第4章 先進国で最悪の貧富の格差
第5章 世界最大の債権国
第6章 少子化問題は起こるべくして起こった

感想

国際データ(ランキング)をもとに日本の立ち位置やランキングの理由、背景を解説しており、非常にわかりやすく読みやすかった。タイトルに絶望とある通り全体的に批判的なスタンスで書かれているのは、若干気になったが、理由まで読めばそう思うなというところ。
東京に住んでおり、「水道」に関して水道料金の引き上げが難しいため、全国で老朽化が進んでいるが、補修できないという話題を聞いたことがあったが、実はそもそもの下水道の普及率が全国で80%程度で、地域によっては50%を切る地域もあるというのは単純に驚いてしまった。ポツンと1軒家のような場所以外でも下水道が整備されていない地域があるということで、社会インフラも一部では発展途上国のようになっていることがあるということである。
後半の経済の話に入ると、日本衰退理由が記載されており、大きく以下の二つが理由である。

①工場設備などの生産設備を海外移転させたこと
②人件費を抑制し続けてきたこと

企業が工場等の海外移転を進めたことで、国内に落ちていたお金(いわゆる経済効果)が落ちなくなり、空洞化してしまった。その分人件費は一時的には安くなった。
一方で、今年も春闘で大企業の賃金が引き上げられるようだが、長い間人件費を抑制し、非正規雇用を増やしてきたため、結婚を希望してもできない男性等が増え、少子化に拍車をかけてしまったということである。
ここ2~3年やっと各企業も賃上げしていく雰囲気になってきたが、本書に記載されているように企業が本質的に人件費を抑えたいということは今も変わっておらず、賃金を引き上げるため「人員の絞り込み」を進めているということを聞いたことがある。(一般社員ではなく、管理職クラスを標的にして進めているようである)


「ゴジラ-1.0」の中で、吉岡さんが対ゴジラの海神作戦を説明し、命の危険が迫った場合は、必ず逃げて欲しいというやりとりの中で
「思えばこの国は、命を粗末にしすぎてきました」
と言う。

まさにこの通りで、AI等で自動化がどんなに進んでもAI自身がお金を使い、消費することはなく、賃金引上げ含めて「人に投資」していかないと国力というのはどんどん衰退していくと思う。イノベーションを生み、多様な人が生きやすい社会を作っていくのは、やはり「人」であり、人にこそコストをかける必要があると気づかせてくれる一冊だった。

最後に、投票率についても触れられており、日本の場合は18歳~30代の若者が選挙に行かないため、若者向けの政策を国が意識する必要なく(それこそ投票してくれる組織向け)になっていると論じられている。
私自身選挙には毎回行っているが、時間帯にもよるだ確かに投票所はどちらかというと中高年からお年寄りが多いように感じる。若者からしたら、なかなか投票したい人がいない、投票しても変わらないというのがあるのだろうし、投票したくないというのも一つの意思表示ではあるが、それでも選挙には行き、投票することで将来のために、自分自身のためにも意思表示をして欲しいと思う。

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