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「貧困から救ってあげるのは善?」 高校時代の著者から考えさせられたこと【掃除婦のための手引書】ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳

「これは1人の人間に起きた出来事!?」

短編が24個収録されています。
子ども時代の話も触れられていました。
ある時は掃除婦、
ある時は教師、
ある時は緊急救命室の看護師。

時々アルコール依存症の時のエピソードもありました。
「何人分の人生を送っているのか」と思いました。

不思議なのは出来事を語っているはずなのに、
詩を読んでいるように感じました。

この本との出会いのきっかけは、母からのLINE。
「テレビに出てた」とのことです。

余談ですが、メロディアスライブラリーでも紹介されていました。
パーソナリティだった。小川洋子さんも推薦。
2019.10.27放送。


・特に気になったエピソード

書籍のタイトルにもなっている「掃除婦のための手引書」も視点がユニークで面白かったです。

しかし、もっと気になったエピソードがあります。
それは、「いいと悪い」でした。

どんな話かと言うと、高校時代の教師のエピソードです。
学校が休みの土曜日に、
先生と共に貧民街へ行きます。

・助けたい気持ちとの狭間

先生は、熱心にこの世の貧困を
解決しようとしています。

「自分たちの存在に誰かが気づいていると、あの人たちに知ってもらうことが大事なの」

掃除婦のための手引書 p103

一方、著者はこの状況を一歩引いて見ていました。

「世の中には変えなきゃいけないことがたくさんあるのはよくわかった。でもそれはあの人たちの問題であって、私じゃない」

掃除婦のための手引書 p108

どちらの言い分も共感できます。
確かに「なんとか助けてあげたい」という気持ちもわかります。
しかし、手助けをすることが良いことなのかと問われると疑問を感じます。

著者のこの態度は冷たいと感じるかもしれません。
しかし、私には「アドラー心理学」の「課題の分離」を実行しているように見えました。

・感想

著者は4人の子どものシングルマザーでありながら
複数の職を転々としたり、
アルコール依存症の治療を受けたりしました。

不思議なのは、文章から重苦しさや悲壮感を感じませんでした。
どこか「仕方がない」と運命を受け入れているかのようです。

この本ですが、買った当初は難しく感じてしまい
数ページで止まってしまいました。
まだメロディアスライブラリーを聴き始める前の話です。

ラジオ放送を通じて、いろんな文学作品を読むことで、読書体力がついてきました。
「今なら読めるかも」と思い、読んでみることにしました。
買った当初とは違い、最後まで読めました。

最初から読んでしまったけど、
表題の「掃除婦のための手引書」から読めば
また違ったと気づきました。

以上、ちえでした。
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