見出し画像

手元におきたい、でも…。【父さんの手紙はぜんぶおぼえた】

「手紙のイラストがかわいい」
表紙や挿絵に手紙の写真が載っていましたが、
かわいらしいイラストでした。

これを書いた(描いた?)のは、主人公リーネケの父親。今の時代に生きていたらデザイナーになっていたかもしれません。

せっかくの素敵な絵手紙ですが、
事情により、捨てなきゃいけませんでした。

メロディアスライブラリー2016.1.31放送。

・リーネケは本名ではない

主人公リーネケですが、本名ではありません。
元は父親と母親の名前をそれぞれ取って
ジャクリーンという名前でした。

なぜリーネケと名乗っていたのか。
それは、ユダヤ人迫害から逃れるためです。

父親は元々大学病院で研究の仕事をしていましたが、解雇されました。
なぜなら、オランダ軍がドイツ軍に降伏してからユダヤ人迫害が始まったからです。

ある日、母親から「危険なゲーム」を提案され、
一家全員で、別の名前になります。
「戦争が終わるまで、その名は忘れましょう」

そのために、偽の身分証明書を作り、
洋服につけていた黄色のダビデを外しました。

・ゲームの終わりを告げる人がいない(ネタバレあり)

幸い、リーネケ一家は母親を除き
全員生き残りました。

母親は「危険なゲーム」の前から肝臓病でした。
家族が離れ離れになっている間に、
病でなくなりました。

リーネケが隠れていた場所へ父親が迎えに行きます。
「また元の名前に」と言われたけど、
ゲームの終わりを告げる人がいなくなった今、
「今更無理」と言いました。

戦争が始まって一家離散した時点で、
家族が揃ってる生活の終わりを告げていたことを暗示されていました。

・リーネケを匿った大人たち

リーネケは父親のつてで、地下抵抗運動してる人たちの家に匿ってもらいました。
年の近い姉も同じく。

一番長かったのは、ドクター・コーリー一家です。
村医者でした。

オランダではユダヤ人を売り渡す人がいました。
実際、アンネ・フランクやエヴァ・シュロスも
密告者によって、逮捕されました。

守る方も命がけです。ユダヤ人を助けていることがわかれば逮捕されます。

それでも、リーネケ一家のために
助けてくれる大人たちがいたのを知って
「ナチ政権に協力していた人ばかりではない」と
実感しました。

・感想

強制収容所に入っても地獄だが、
逃れたからと言って
安心できるわけではないと感じました。

何よりもリーネケが大切にしていた
元の名前を捨てなければ生きていけないほど
過酷な状況に追い込まれていたことがわかりました。

リーネケの楽しみは、父親からの手紙。
保管しておきたいところですが、
ナチスの手に渡ると
たくさんの人に危害が及ぶため、
燃やすことになってました。

しかし、預かってたドクターコーリーは
手紙を燃やしてしまうのは惜しかったため、
土の中に埋めて隠していました。
残ったものが、本書内に公開されています。

オランダ語は全く読めませんが、
日本語訳はついているし、
イラストを見るだけでも楽しめます。

あとがきで知りました。
第二次世界大戦中に、ユダヤ人の死亡率が
オランダで70%なのが衝撃でした。

以上、ちえでした。
プロフィールはこちらです。
他のSNSはこちらです。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?