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こうやって本の文化が広まった【モンテレッジォの小さな村の旅する本屋の物語】内田洋子著

「本を売り歩いていた人たちがいたんだ」

2022.10.30のメロディアスライブラリー放送。

高校の世界史でイタリアの歴史については
ある程度習いましたが、
モンテレッジォという土地の名前は初耳。
この放送で知りました。

著者はイタリア在住の日本人ジャーナリスト。
日本でもイタリアについての書籍を多数出版してます。
ある古本屋に行った時に、そこの店主からモンテレッジォについて教えられたのがきっかけで調べることになりました。

今の時代、図書館も充実しているし、
古本屋も書店も、ネット通販もあります。
しかし、1800年代は本を手に入れられる人は
一部の特権階級の人に限られてました。

モンテレッジォの人が本を売る相手は
特権階級ではない一般の人です。


・本の行商を始めたきっかけ

1816年に夏のない年がありました。
北ヨーロッパ、アメリカ北東部、カナダ各地で起こった現象です。
5月は霧、6月は吹雪や深い積雪、
7月と8月は河川湖の凍結という異常気象。
30度を超える気温から突如零下まで激変するという状態でした。

なぜこんな異常気象が起こったかと言うと、
1815年までの数年間にカリブ海、鹿児島、インドネシア、フィリピンで火山が次々と噴火。
大量の火山灰によって
太陽光が遮断された結果です。

こんな天候では農作物はまともに育ちません。
農業そのものがなくなってしまいました。

困ったモンテレッジォの人たちは、
聖人の祈祷入りの絵札、生活暦を売り始めました。
これがきっかけで、本を売り歩くようになりました。

行商人の中でも文字が読めない人はいました。
神父からの説法を聞いて覚えたそうです。

文化の発祥というと、
比較的お金持ちの人から始まるイメージ。
しかし、決して裕福とは言えない人たちが
本を売り歩くことで、本の文化を広めたというのが面白いと思いました。

・まさにミイラ取りがミイラになった話

リアルさを感じたのが、第二次世界大戦の時期に
ファシスト党が政権を握ってた時のエピソード。

当時禁書がありました。
政治的な活動家の主張が書かれた本はもちろん、
過激な恋愛、小説なども対象になりました。

驚かされたのは
取締側の人間がモンテレッジォの行商人から
こっそりポルノ本を買っていたことです。 

「ミイラ取りがミイラになる」ならず
「禁書取が禁書買いになる」と締めくくりました。
建前上はダメと言ってても、欲望に抗えないものかと、人間の性を感じました。

禁書は高く売れるので、リスク覚悟で売ってた行商人もいたようです。

・イタリアでも進んでる

本の行商人の発祥の国ですが、
イタリアでも読書離れが進んでいるそうです。

2010年から2016年の間に
430万人の読書人口が減りました。
イタリアの全人口は6060万人です。

一冊も読まなかったと答えた人が
男性で64.5%、女性で51.1%です。
学歴でも差があり、
中卒の人だと77.1%、大卒の人だと25%の人が
一冊も読んでないと回答。

日本の調査でも、
約半分の人がマンガや雑誌以外の本を
一冊も読んでないと回答していますが、
「イタリアも変わらないんだなぁ」と
親近感が湧きました。

・感想

出版されたのが2021年。
イタリアでは日本以上に
厳しいロックダウンが行われました。

イタリア政府は「本は大切な友達」ということで、
本屋さんは通常営業していたそうです。
日本では、古本屋は休業対象にならなかったけど、
新刊を扱っている通常の書店では
休業したところもたくさんありました。

国内で読書離れが進んでいるとはいえ、
文化として大切にしていると感じました。

所々に写真がのってましたが、
町並みがとても美しかったです。
イタリアに行ったことはありませんが、
美しい風景が浮かびます。

美しさを感じたのは写真だけではありません。
文章表現にも感じました。

300ページ以上あり、それなりに厚みのある本ですが、あっという間に読んでしまいました。
まるで音楽が流れるかのようです。

もしイタリアに行く機会があったら、
本屋さんに行ってみたいです。
しかし、イタリア語が読めないので
買っても内容がわからないため、
写真や絵が多い本を選びそうです。

以上、ちえでした。
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