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極限状態に置かれた人間の心【夜と霧】

「過酷な環境は人の心まで変える」
それが、じわじわと伝わってきました。

メロディアスライブラリー2008.1.27放送。

・心の変化に段階がある

3つの段階で心の動きを説明していました。

  • 第1段階:収容ショック

  • 第2段階:感動の消失

  • 第3段階:収容所から解放されて

著者は強制収容所を体験した心理学者です。
極限状態に追い込まれたとき、
どんな心理状態になるかを細かく書かれています。

第1段階では、「自分は助かるかも」という
「恩赦妄想」が出てきます。
処刑間近の死刑囚が、そう思うようなイメージ。
しかし、入り口にいる被収容者はエリート。
比較的優遇されています。

第2段階では、病人や死者を見慣れたせいか、
「悲しい」などの感情がじわじわ死んでいきました。

第3段階では、解放されてもしばらく実感がわかなかったそうです。
仲間たちが「強度の離人症」になったと指摘。

衣食住もままならない中、
自分自身が生きのびるのに精一杯。

この原稿を書いたのは、チフス熱で1日だけ休みになった時です。そんな状況でよくここまで書けたものかと感心しました。

・生きる意味

わたしたちが生きることからなにを期待するかではなく、むしろひたすら、生きることがわたしたちからなにを期待しているかが問題なのだ、(以下略)

夜と霧 p129

よく引用されているのを見かけたので、
聞いたことはありました。
最初に知ったときは、「どういうこと?」と疑問。
その続きに以下のような例えがありました。

外国で父親の帰りを待つ、
愛している子どもがいる人。
仕事が待っていた研究者など。

例えを読んで、「そういうことか!」と
イメージが湧きました。

自分を待っている仕事や愛する人間に対する責任を自覚した人間は、生きることから降りられない。

夜と霧 p134

大切な人にせよ、仕事にせよ、
自分を待っているものの存在は生きる活力になると気づかされました。

・感想

著者の強制収容所での生活が描かれていますが、
まるで心理学?哲学?の教科書を読んでいるかのようでした。

驚いたのは、書かれた時期です。
強制収容所にいる時にチフス熱にかかりました。
1日だけ休みになりましたが、その時に書いたとのことです。

後世に残そうとしたのでしょうか。
書いた状況もですが、ここまで冷静に観察されているのを見て、「あっぱれ」の一言です。

他のホロコースト文学作品でも触れられていましたが、生きのびても重いうつ病になったり、人間不信になったりした人がいました。

3つの段階を見て、「精神的に不調をきたしてもおかしくない」と感じました。

心理学に興味のある方、
「生きる意味って何?」と思っている人に
オススメの一冊です。

以上、ちえでした。
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