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芥川賞候補作から学ぶ「トランスジェンダーの人が置かれている苦境」【Blue】川野芽生著

「身体と心の性が違う」
こんなに苦難があるのかと思いました。

自分の心は「女」と思っているのに、身体は「男」
身体が男ならば、第二次性徴期以降、より男らしくなります。

私は経験したことがないで、どんな感覚かわかりません。
しかし、違和感があることだけは想像をつきました。

今回の話から、身体と心の性が一致しない人たちが置かれる苦境を学びました。


・お金がかかる

性別適合手術があるのは聞いたことがあります。
昔、話をした人で、男から女になった人がいました。
「声を低くすることはできても、高くすることはできない」と話していたのを覚えています。

詳しいことは知りませんでしたが、
性別適合手術をした後、
一生ホルモン治療が必要なことに驚きました。
健康保険が使えないため、手術をするために200万円はかかるそうです。

この話の主人公眞靑は、
就活までに手術代を用意するために、
バイトと学業を両立させていました。
無理をしたため、うつ状態になってしまいました。

家族など支援してくれる人がいればいいでしょう。
しかし眞靑の性の違和感を受け入れていた両親も、
手術には反対でした。

「自分で何とかするしかない」と
一人暮らしをすることに。

なぜ、彼らがうつ病や精神疾患になりやすいかがわかりました。

身体と心の性がずれている時点で
精神的な負担はあるのを想像しましたが、
それだけでは済まなかったようです。

・手術をした先に手に入れるもの

たとえ手術ができたとしても、待っている未来は
トランス差別と女性差別という厳しい現実です。

眞靑の場合、就職後に手術をすると差別されると考え、就活が始まる前までに手術代を用意しようとしていました。

新卒の就活でうまくいかなければ、
後はどうにもならないから、
チャンスはここしかないと追い込まれました。

・あるニュースから感じた違和感

トランス女性が女湯に入ることに対して、
一時話題になっていました。

様々な人の書き込みを見ましたが、
「男性が女性のフリして入るようになったら、安心して使えない」とSNSで炎上しました。
特に女の子のお子さんがいる方が強く主張していました。

この騒ぎを見て、私は「そもそと当人たちはそれを望んでいるのか」と疑問でした。

SNS で当事者と思われるアカウントを
何名か見ました。

私が見た母数が少ないので、
これが一般論とは断言できません。
しかしこれだけは一致していました。
「自分たちが、女子トイレや女湯を使わせてもらえるとは思っていない」

大騒ぎしている人のイメージと比べて、
遠慮している印象を受けました。

当事者を置き去りにして、
話が進んでいることに強い違和感がありました。

・感想

『Blue』は第170回芥川賞候補作です。
『迷彩色の男』はブラックミックスのゲイが登場していましたが、こちらはトランスジェンダーです。
LGBTQ関連の作品が2作候補作に上がるのは偶然でしょうか?

今回の話は、演劇部の高校生が
人魚姫の劇を行う話でした。

美しい声と引き換えに人間になろうとした人魚姫と
男から女になろうと考えていた主人公眞靑が
重なりました。

2つの共通点は、一度決めて変わってしまうと
元に戻れないことです。
人魚姫だと地上と海、人間世界だと男と女に分かれているのを実感しました。

この演劇部に、眞靑以外にも、自分の性になんとなく違和感がある人たちが出てきます。
「線引きするのは難しい」と感じました。

身体と心の性が一致しない感覚は
結局わからなかったけど、
私が想像できないほどの
苦難があることだけはわかりました。

以上、ちえでした。
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