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職場 それは甘い響き

26年間教師として働き、
32歳までは運動部顧問をしていた。
若いとはいえそんなに強くない心身は多忙すぎて、
インフルエンザ、血尿、十二指腸潰瘍も帯状疱疹も経験した。ノロはまだである。
その後も悩む(古語の「なやむ」は、病むことも指します)こと多く、
教師を辞めて、本を書いたりして2年ほど療養した。

久しぶりにちょっと「社会」に出てみたくなった。
そんな時期に、母校の関係で週1、2回、事務のお手伝いをする機会を得た。
謝礼は多少出る。
一緒に働き仕事を教えてくれるのが、時期は違えど同じ学舎で過ごした先輩たちであることもあり、
安心して通っている。
それでも緊張はするし、
仕事を覚えようと必死だ。

直で仕事のエリアが同じの2人の先輩が、異国料理店で、リッチな歓迎会をしてくれた。
女子校卒なのでお2人ともご婦人で、
「歳の離れたお姉様」くらいの年齢だが、
2年以上母と連絡を取っていない私には、
お母さんみたいに感じられる。

お食事しながら、質問されて自分のことを話す流れになるのかな、と思っていたが、
「カウンター席に並んで座り、シェフとソムリエとお話ししながらいただく」
というオトナの食事のしかただった。
口紅が剥げる前に、と最初に3人で写真を撮った。
私は真ん中。
この膝下を出すのか、と前夜に散々悩んだ、私にしては品のいい柄のワンピースを着てきて良かった。
胸元のリボンと木のカウンターが、気になる歳と脚に目隠しをしている、はずである。

「3人はどんなご関係なんですか」
お店を予約してくれた先輩が答えた。
「職場が一緒で」

「職場」、この甘い響き。
甘い、職場。

韓流ドラマで、大苦戦の末にやっと正社員の座を得たアラサー女子が、社員証を首にかけたまま就寝するシーンがある。
翌朝出勤する彼女の靴下の爪先には、穴があいている。

「聞いてよ、職場でさ」と眉をひそめていた私は、
贅沢言ってたんだな。

焼きたての小さなプレッツェル、美味しかったです!

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