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あの選択をしたお前に悔いはないか

⭐️はじめに⭐️
『やらないで後悔するより、やって後悔した方がいい』
あの言葉は真実だろうか。
50歳になって今さらそう考える。
40代で、『選ばない方が良かった気がする』ことを2つも選んだからだ。
①歯の矯正
小さい頃ヤブ医者にかかり、矯正をしたのに、歯列が乱れてきていた。
経験した方は分かると思うが、ワイヤーやゴムで押し引きして歯を動かすので、調整して暫くはジンジン痛い。柔らかい物しか食えない。傷が口内炎になる。それを数週おきに繰り返す。
歯磨きも大変だ。
矯正器具が長期にわたり歯にへばりつき、写真を撮る時の表情選びにも困る。
私は幼い頃、既にそれらを1周経験していた。だのに、かかりつけ医に再矯正を提案された時、歯を8本抜くことに始まり、遠方の歯医者に長期間、働きながら通うという茨の道を選んだ。費用も高かった。
身近にいろいろ素敵でお洒落な一般青年がいて、私は自分を『可愛い』『綺麗』に近づけることであれば、可能な限りやりたかった。彼は私にとって年下のリア友で、私は、『小綺麗な40代の友達』になりたかったのだ。乙女の祈りである。そのリア友が私を小汚いと言ったことはないし、『村野さん(仮名)、矯正、ぜんっぜん必要ない』とも言ったのだが。
抜歯後の歯茎のかさぶたが剥がれて激痛、という苦難から始まった歯列矯正、2年くらいかかっただろうか。
やっと器具を外してみたら、その前から主張が強めだった顎がさらに目立った。
顎が伸びたというより、上下の歯が内側に窄まったからそう見えるのだと思う。
思いきりの笑顔を作って横顔を鏡に映すとそこには褐色の三日月があり、私は今も歯を見せて笑えない。
転職
『転職』と言っても、私の場合は職を変えていないので、正確には『転・職場』だ。
私は長いこと教師だった。何回か学校を転じた。
会社もそうに違いないが、『全て』を気に入る職場はなかった。
生徒はみんな性格いいけど(みんな性格良くなきゃいけないことはないが、多数が「性格いい」と他の子も寄ってくる、寄せてくるのだ)職員室が嫌だ、と一番長い間思った。
嫌だ、と思った理由を煮詰めたら、『認めてもらいたい』の一言にきっと尽きる。
その末最後の転向、『転校』ではウツを患ってしまい、だけどわざわざ遠くの歯医者に通うくらい病院オタクなので、選んだ医院で程なく治る、予定だった。
しかし、50歳を目前にした私の病は病名を転じてこじれ、私は休職し、退職し、傷病手当金をもらい、雇用保険をいただいた。
そして最近、人生の選択肢に浮上したことのなかった、『被扶養パート主婦(職業的物書き志望)』になった。
文学賞の一次選考を通過できたことがまだない。
⭐️まとめ⭐️
私は、中途半端な歯並びを、職業生活をそのままにするのが怖かったのに、『変えたらどうなるか』を何故か怖がらなかった。怖がることができなかった、とも言える。
『後悔』っていうのは『後』にくるものだ。特に私の場合はそうだった。
『やって後悔するか』『やらないで後悔するか』はやる『前』には分からないわけだし、どっちも後悔するとして、どっちの後悔が大きくなるのか、それも量れない。
どっちも後悔するけどどっちがましか事前に分かったら、選ばなかったはずの道。
私は、それを選んだ。
今、思う。
『あの時選びたかったことが、私に潜在する性質や欲求を私に教えた』
私は私の闇、病みを知った。病には遺伝的要素もあった。もっと前から認識し、危惧すべきだったのである。
そして私は、自由になってみたかった。
四半世紀働いた。死ぬまでは無理だけど、当分なくならない程度に貯金はある。
組織に属することが自由を妨げるとは思わないが、私の場合は、いっぺん解放されたかったのだ。
私の自由は今、すがすがしいと同時に肌寒い。
全ての人の選択が、いつか『笑える』ものになりますように。本人にとって、周りにとって。

載せた写真は、パート先に行く途中に咲いていたマグノリアである。
『こんな風に美しく花が開くのは、ほんの1時間くらいなのよ』
じょうろで水をあげていたご婦人がそう教えてくれたので、写真を撮った。

#あの選択をしたから

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