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ともきち The Best

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毎日の投稿記事の中で、個人的お気に入り記事「ともきちThe Best」を溜めていきます。
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記事一覧

人生で初めて買った化粧水は、半分しか使えなかったけれど

YouTubeのおすすめで流れてきたショート動画『【保存版】2022年ベストコスメランキング』を観ていて、ぼくは10年前のある日のことを思い出していた。 人生ではじめて「化粧水」を買った日のこと。 その化粧水は半分しか使えなかった。 でも不思議と満ち足りた気持ちになった。 そんな昔の話を、今日は書きます。 *** 京都の繁華街、四条河原町の一角にあるドラッグストア。ぼくはこの日、人生ではじめての「化粧水」を手に入れるべく、コスメコーナーに立っていた。 当時19歳の

雑な中華料理屋がいい

その中華料理屋は、町に溶け込んでいる。 1970年創業のそのお店は2年前にリニューアルオープンしたばかり。 新しい看板は鮮やかな朱色で、看板の両サイドには「ザ・中華」と言わんばかりに金の龍が描かれている。かつてあれほどツルツルと滑った床は、心地よい音が響く木の板張りに変わった。アルミサッシの引き戸が鈍く光っていた外観も、窓が増えたことで随分と開放的な印象になった。 それでもなお、その中華料理屋は以前と同じように、町に溶け込んでいる。理由はきっと、今も昔も変わらず「心地よい

弟の奥さんは、数の子好きのシャイなぷぅ。

ガラガンガンと、玄関の引き戸が開く音がする。「お、来たか」と出迎えに行くと、「ただいまー」も、「あけましておめでとう!」も言わずにただ立っている、弟の姿が目に入る。と、その隣には、明るいベージュのコートを着た、おとなしそうな女性がいた。 はじめて会う、弟の奥さん。 ぼくはその奥さんを「シャイなぷぅ」と呼んでいる。親しみを込めて、もちろん心の中で。 *** お正月、父と母がふたりで暮らす実家に、3人きょうだいの家族が全員集まることになった。ぼくと妻、妹と彼氏、そして弟と

母、パンをこねる。

電子レンジの横には、ダイソーで買った白いフックが付いている。フックにはビニール袋がぶら下がっていて、中には5個、「パン」が入っている。 昨日パン屋で売れ残った「おつとめパン」たち。 半年ぶりに帰った実家の、何年も変わらない光景。袋に手を突っ込んで自分好みのパンを選ぶ、あの朝ごはんのひとときが今でも好きだ。 *** ぼくが小学5年生のころ、母がコンビニのアルバイトをクビになった。 はっきりとそう教えてもらったわけじゃない。母が朝早く、家を出ることがなくなった。軒先に吊

グッド・ウェディング

ほんの一瞬、息が止まって、そのあとなにかが体の深いところで揺れた気がした。意識を集中させて、自分の心臓の音を聞いたときのような感覚。両目はしっかり開いていたはずなのに何も見ていない時間があったことにハッとする、あの不思議な感覚。 今日ぼくは、元カノの結婚式に出席した。 *** ガラス張りの天井と、純白の大理石に囲まれた長方形の空間で、ぼくたちは彼女を待っていた。昨夜見たスマホのお天気アプリに「明日は折りたたみ傘を」と書いてあったのが嘘みたいに、今日は快晴。天井に掛けられ

他部署の足立さん

この気持ちはきっと恋……じゃない。信頼の延長線上だ、あくまで人として好きなだけだ。 そう自分に言い聞かせながら、今日もオフィスでキーボードを打つ。一度しか会ったことのないあの人宛に、WEBページの更新依頼を送る。そして彼女から「スター」をもらえることを、ほんの少しだけ期待している。 WEBページの担当者ぼくはホテルで働いている。「ホテルで働いている」と聞いて、フロントに立つ爽やかお兄さんを想像した人も多いと思う。もちろん、体操のお兄さんばりに笑顔はじける人もいるんだけど、

妹が、強面ムラスポかれぴを連れてきた。

妹のTwitterがイタイ。 あ〜ん、デートの為に有給とらなきゃっ イタイ。 仕事おわらんウケるまじむりぽよ ウケない。 強面かれぴと2ショット♡ ムラスポの鏡で写メるでない。 ぼくは現在、29歳だ。ムラサキスポーツの略称「ムラスポ」はかろうじて使いこなせるものの、スマホで写真を撮るときにはつい「写メ」と言ってしまう、そんな世代だ。 そしてぼくには妹がいる。ポケモン・デジモン・ベイブレードで幼少期を過ごしたぼくとはちがい、ミッケ!・プリキュア・かいけつゾロリで

あの頃を思い出しながら、赤星を3本。

平成3年生まれ、今年で30歳。学生時代の友人とはだいたいがSNSでつながっている。Twitter・Facebook・Instagramのうち、最低1つは相互フォローになっていて、甥っ子と遊んだり、職場で表彰されたりと、更新頻度の多い人だと学生のとき以上に近況を把握している。 そんな今の時代に、顔もわからないほど疎遠になっていた元親友と、10年ぶりに再会することになった。 その彼と飲んだビールが、最高にうまかった。 今日はそんなはなしを書きます。 ・・・ ルクアの10F

29年目の夏を迎えて、本の「読み方」が変わってきた。

夏が来る。ぼくにとっては29年目の夏。その年々で夢中になることは違っていて、TVで『ウォーターボーイズ』の再放送をひたすら観る夏もあれば、炎天のもと、ゼーゼー息を切らして公園を周回する夏もある。 ただ毎年、欠かさずやっていることがある。 本を読むこと。 特に夏は、カフェで読むことが多い。 店に着くまでの道中で「ぜったいにアイスにする」と固く誓うのに、空調の効いた店内に入って腰を下ろした途端、「ホットにしようかな」とあっさり決意が揺らいでしまう。 学生の頃はお財布事情も

初任給、家族で食べた「幻のお肉」

「幻のお肉」と聞いて、どんなお肉を思い浮かべますか?厳正な基準をクリアした銘柄牛や、一頭からほんの少ししか取れない希少部位、といったところでしょうか。 ぼくの場合は、家族みんなでざわざわしながら食べた「赤身」のことを思い出します。 今日は、ぼくの家族ならではの「幻のお肉」についてはなします。 今から8年前、ぼくが今勤めているホテルに就職し、はじめてお給料をもらったときのことです。もらった初任給で、家族を「回らないお寿司」へ連れていきました。 父、母、ぼく、弟、妹の5人

魅力ある文章の秘訣ってなんだろう

生まれてこの方、「ライブ」と名がつくものに参加したことがない。緊張する。人前でウェイウェイと騒ぐのが恥ずかしい。 ついこの前まで、最も身近なライブ経験が『CDTVライブ!ライブ!』をテレビで観ることだった。ヤバTの『ウェイウェイ大学生』を聴くのがぼくの中のMAXウェイウェイだった。鳥貴族でサワーで乾杯したあとスポッチャでオールナイトしたことはもちろんない。 そんな自称ライブ恐怖症のぼくが、先日、はじめてライブ配信に参加した。ウェイウェイと騒がなくて良さそうな配信だった。事

疲れた時にエッセイを読む幸せ

スマホの画面がいつもより眩しい。日中のPC作業で目を酷使したそんな日の夜は、noteを読むのも少しだけ億劫になる。 仕事は激務だった。昨今のホテル業界は暇だと思われがちだが、その分、出勤日数や人数を減らしている。残業なんてもってのほかだ。特に裏方、いわゆる管理部門はいっそう厳しい。つまるところ、出勤日にはやることが山積みの状態だ。 今日もせっせと働いたわけだけど、その代償が目にきた。すぐに眠ってしまいたい一方で、頭の中はまだ仕事モード。できるならリラックスして、心地よい気

Tシャツを着てもビッグにはなれなかった

シャワーを浴びていた元カノに「歯磨き粉とって」と言われ、まちがって洗顔クリームを渡したことがある。数分後、「なんかヒリヒリするんやけど!!!」と元カノがシャワールームから飛び出してきた。 彼女が身につけていたのはバスタオル1枚。見惚れていると、おもいっきりみぞおちをグーパンされた。めっちゃ効いた。 この失敗からは、人のみぞおちをグーパンしてはいけないと学んだ。 くだらないものも含めると、ぼくはなかなかの数の失敗を経験している。その数だけ学びがあると信じて、今日は人生のタ

白が好きな女の子、肉が好きな女の子

駅へ向かう途中、白が好きな女の子と出会いました。白が好きというのはもちろんぼくの予想です。でもそう確信するくらい、すごくまっ白な女の子だったんです。 白のスニーカーに白のデニム。9部袖のカットソーも白で、右肩に提げているキャンパストートも同じく白。音楽を聴きながら歩いている、その有線イヤホンですら白という徹底ぶり。 ただ唯一、髪の毛だけが栗色。 ぼくはちょうどイヤホンを耳にいれて、「さて、何を聴こうかな」とApple Musicのライブラリで曲を選んでいるところでした。