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2024年版、治安の悪い国はどこだ?〜米国の治安は途上国レベル?〜

 海外旅行の度に驚くのは世界には治安が悪い国が多数存在することだ。日本のようにどこに行っても殺されないというのは稀有な地域なのだ。中にはガードマンがつかないと外出できないと行った国も存在する。とはいえ、日本人から見ると外国は全て治安が悪く見えるので、相対比較は難しい。今回は世界の治安の悪い国について見ていきたいと思う。

 治安の悪さを査定するには殺人事件発生率がもってこいだ。警官の人口比や窃盗件数の場合は国によって条件が揃わない可能性が高いからである。やはり平均寿命などもそうだが、人の生き死にに関するデータが一番信頼性が高い。人間は死ぬか死なないかの二択だからだ。汚職や交通違反ははっきりとした定義が難しい。グレーゾーンも沢山あり、指標にはしにくい。

というわけで、国ごとの殺人事件発生率を見ていこう。

 この手のランキングは隔年変動が激しい。中南米とアフリカの治安が悪いという大まかな傾向は踏襲されているが、上位の国は頻繁に入れ替わる。1位は今のところジャマイカである。この国は安定して治安が良くない。

 2010年代の後半であれば、上位はエルサルバドル・ホンジュラス・ベネズエラの三カ国で占められていた。ところがホンジュラスとベネズエラは落ち着き、エルサルバドルは政権交代で殺人事件発生率が中南米で最低にまで改善された。ベネズエラの場合はあまりにも危機が深刻で犯罪どころではなくなったからとも言われている。

 代わって殺人事件発生率が急上昇したのはエクアドルだ。以前は中南米の中では並みの国だったが、麻薬組織同士の抗争が激化し、有数の治安の悪さとなっている。南アフリカは昔から治安が悪いが、ここのところ上昇しているようだ。人口1000万人以上の国では伝統的に最も治安が悪いとされる。ジャマイカなどカリブ海の小国も以前から極めて治安が悪かった。

 他に治安が悪い国といえばある程度の規模の国ではメキシコ・ブラジル・コロンビアが挙げられる。コロンビアは1990年代は紛争地帯に近かった。最近は改善されているが、それでもかなりの水準である。ハイチはこれらの国よりも殺人事件発生率が低い。意外な結果だ。ここ最近のハイチは政府が崩壊しており、政治危機が発生している。路上で人が焼かれていたりもする。警察がまともにデータを取れていないのだろう。他にも上位に来るのは中南米とアフリカばかりである。特に中米カリブ海地域とアフリカ南部が酷い。

 ユーラシア大陸は比較的治安が良い。ユーラシアは紛争は多いが、殺人は少ない傾向がある。その中では伝統的に治安が悪いのはロシアだ。ソ連崩壊後のロシアは一時期中米並みに治安が悪かった。最近は流石に落ち着いている。フィリピンも同様に治安が悪かったが、ドゥテルテ政権下の弾圧政策で一気に改善された。中東やインド亜大陸はデータを信じるならば比較的治安は良いことになる。紛争地帯だからといって殺人が横行しているわけではないらしい。

 治安が悪いのは旧ソ連諸国だ。理由は良くわからない。特にシベリアなど辺境の地で治安が良くないようだ。ヨーロッパと旧ソ連諸国の間には明確に治安上の差異が生じている。バルト三国はヨーロッパと歩みをともにしてきたが、治安上は旧ソ連の方に分類されるだろう。多くの割合を占めるロシア系住民が悪さをしているのが原因だと海外掲示板に書いてあったが、信頼性は低い。

 ヨーロッパは先進国なので治安はそれなりだ。ルーマニアは危険と言われるが、それでも旧ソ連に比べれば遥かに安全のようである。しかし、治安の良さで眼を見張るのはなんといっても東アジアだ。特に日本の殺人事件発生率は世界最低水準である。日本が人口1億人を超える大国であることを考えると、素晴らしい結果だ。ここまでではないが、中国も途上国であることや人口が14億もいることを考えると極めて良い結果となっている。

 ところで、先進国の中で突出して殺人事件発生率が高いのはアメリカだ。しかもここ数年上昇傾向にある。日本の30倍、イギリスやフランスと比べても6倍に当たる。ロシアやフィリピンと言った国と変わらない。治安面でアメリカは途上国レベルと言えるだろう。北のカナダは平和なイメージがあるが、それはアメリカと比較しての話であり、先進国の中ではアメリカの次に治安が悪い。新大陸という土地はとにかく物騒だ。西部劇は日本では考えられないような治安の悪さを背景としている。殺人が日常化していて、悲劇とすら捉えられていないのだ。明治の屯田兵にあんなエピソードはない。

 全体的は南部諸州が治安が良くないようである。ルイジアナ州に至ってはメキシコ並みだ。建国当初から続く黒人問題が原因の一つかもしれない。地域によっては更に治安が悪い。世界の殺人事件発生率の高い都市のランキングにはメキシコやブラジルに混じってアメリカの都市も入ってくることが多い。デトロイト・ボルティモア・セントルイスといった都市の殺人事件発生率は50〜100といった水準であり、局地的にはジャマイカを上回るレベルである。先進国では類例を見ない。

 こうした事情を反映してか、アメリカは世界有数の刑務所大国だ。バイデン政権になって少し低下したが、アメリカの刑務所人口比率は世界一だった。アメリカの人口の1%近くが刑務所に収容されていた。スターリンのソ連と何ら変わらない比率だ。なお、現在の1位は政権が大量投獄政策を始めたエルサルバドルだ。刑務所人口は総人口の1%を越えている。

 治安と同様に南部諸州の刑務所人口が多い。最も治安が悪いルイジアナに至っては人口の1.5%が刑務所に住んでいる。ただし民主党の強い東海岸と西海岸はそこまで高くない。リベラルは投獄に寛容なのだろうか。ただし、アメリカの大量投獄が本格化したのはクリントン時代である。また、刑務所の人種の偏りも激しい。黒人が投獄される可能性は白人の7倍とも言われる。黒人男性の3人に1人は刑務所に入ったことがあるか、今も入っている。こうなると、黒人の半分以上が身内に前科者がいるということになる。黒人シングルマザーは夫が刑務所にいるというパターンが多いのだ。アメリカの深刻な人種問題が伺える。


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