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ルパンでピアノ発表会、再デビュー!!

私は“そこそこエエ歳”になってから、改めてジャズピアノを習い出した。

▽その時のきっかけになった話が載ってるのはこちら

“大人のピアノレッスン”ということで、好きな曲を見てもらえるのが、特に嬉しかった。

先生に習いだしてから、ジャズの概念というのは、私が思っていたものと、実は全然違うものであると知った。

詳しい内容は割愛するが、先生が仰る“ジャズ”は私が本来やりたかったことではなかった。

私は、人と一緒にする合奏の楽しさも、勿論小さい時から知っているが、自分の性格上、一人ソロで演奏したかった。この10本の指を使って何とか原曲に近いもの、もしくはジャズ風に弾きたかった。

その中で、松田聖子の「スイート・メモリー」を皮切りに、好きな曲を練習して指導してもらっていた。

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そんなある日、割と大きい書店の譜面コーナーに立ち寄ったら、ルパン三世の楽譜が売られていた。

実は私は小学生の時から、ルパン三世のテーマを弾きたいと、実際のアニメを見る度にずっと思っていた。

その当時は題名等、詳細はハッキリ分からなかったが、後にルパン三世のテーマはアレンジ違いで3曲あることが判明し、私が弾きたかったのはジャズアレンジが抜群に効いた、「ルパン三世のテーマ’80」だった

他も勿論好きだし、カッコイイのだが、私が求めてるルパンの曲は、昔から完全にこれ一択だった。

たまたまルパンのベスト・アルバムのCDを買って、聴いているうちに違いが分かったのだが、そのCDのために出たのか?というような楽譜が売られていた。

▽ルパン三世のテーマソング等が載っているアルバムはこちら

私が求めているアレンジかどうか確認するため、その譜面を見た瞬間、衝撃で後ろにのけ反り、倒れそうになった。

「コレや!コレ!!」

難しそうだが、私が“こんな風に弾きたい”というフレーズやエッセンスが散りばめられた、まさに私が求めていた「ルパン三世のテーマ’80」であった。

「これ、買います!!」

と言って、若干鼻の息を荒くしながら、レジで会計している記憶しか、その後は残っていない。

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今、レッスンしてもらっている曲もそこそこに(コラコラ)、ルパンを練習し始めた。

譜面のイメージは掴めているが、なかなか難しくて弾けない。

1小節毎に躓きつまづきまくり、途中でめげそうになるが、長年の夢だったルパンを弾くために、毎日会社から帰ってきたら、私はひたすらコツコツと練習した。

「今のレッスンしている曲が終わったら、コレを持っていこう!」と準備を重ね、遂に先生に一度聴いてもらって、「コレを習いたい。」と話した。

弾くのに必死で、ミスも多かったが、何とか“だいたいの形”はできた。

「あなた、これすごいじゃない!これこそジャズよ!!今度の発表会に出てみたら?」

「え?発表会ですか?私は発表会出るつもり、元々なかったんですけど…。先生、発表会って勿論小さい子も出るでしょうけど、大きくなって、ショパンやリストの大作を弾く人が多いでしょう?そんな中で、私みたいな違ったテイストイロモノが出たら、何かおかしな感じになりませんか?」

「そんなことないわよ。これなら皆の前で弾いても、謙遜がないわ。子供たちもこれ聴くと、良い刺激になると思うわよ。発表会までまだ時間もあるし、是非チャレンジしてごらん!」

「…はい、分かりました。」

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…何だか知らんが、とんでもないことになってしまった。

私は自分の趣味レベルで、家でコソッと弾いたり、誰か遊びに来た時とかに披露できたらいいな位にしか思ってなかったので、こういう展開は全く予想していなかった。

おそらく自分の子供世代が多く習いに来ていると思う。その子達に加え、私の世代あたりの“親御さん”が聴くことになるのである。同世代の親御さんたちが聴いたら、どう思うのだろう?

ちなみに私はショパンやリスト等の大作は全く弾けない。クラシックからとうに離れた違ったテイストイロモノが好きで、そういうのを習う前から随分と趣味で弾いている。

そんな中で大丈夫なのだろうか?
しかもピアノの発表会なんて、小学校6年生以来である。

数々の不安を抱えつつ、子供の頃からの夢を舞台上で皆に聴いてもらうことで叶えられることに、ワクワクさもあり、ひたすら練習した。

本来は譜面通りに、作曲家、編曲家を尊重して弾かないといけないのだが、私は他のルパンの楽譜も間に探し続けて、

「先生、ここにはこのフレーズを入れたいんですが構わないでしょうか?」

と実際弾き、お伺いを立てて、“自分の理想のルパンのテーマ’80”を先生と一緒に作り上げた。

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そんなある日のレッスンで、ふと、どのあたりの順番で弾くのか気になり、先生に聞いてみた。

「先生、私、どのあたりで弾くのでしょうか?」

「…あのね、一番最後。」

「え”っ!トリですか?ショパンやリストの人が後ろに来るんじゃないのですか?」

「いや、このルパンはとても華やかだから、他の曲のことを考えても、これを一番最後に弾いたほうが、発表会のラストとして映えるのよ。…らびっとさんに言うと、ビックリすると思って、もうちょっとしてから言おうと思ってたんだけど。」

「………そうですか…。」

これまた、困ったことになった。

先生が仰ってることは、ある意味前向きで嬉しいし、有り難い。

「しかし私、何年ブランクあるよ…、しかも違ったテイストイロモノ系やのに…おばさんが急にこんな目立って、ややこしいことにならへんかな?」

と不安でいっぱいになった。まさに顔にタテ線状態である。

「トリかぁ…。」

若干気が重いが、先生の有り難い提案を無下むげにもできない。

これから私はどれだけピアノ生活が送られるのか知らないが、こんな機会は滅多にないだろう。

もう後戻りはできない。ひたすら練習するしかない。

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レッスン中、先生に演奏のことも指摘されるのは当然だが、弾き方というか姿勢についても指導してもらった。

先生に指摘されるまでは、“前川清の直立不動、座ったバージョン”になっていたが、言われた通りにやると、今度はオーバーアクションになってしまう。

本当にその兼ね合いが難しかった。

エンディングの最後の音を弾いた後の手は、「音を見せる」為にも少々上げることに決まった。

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発表会が近くなってくると、舞台衣装も考えなくてはいけない。

ドレスは不要だが、ルパンにふさわしいカッコよさと太った自分のサイズを考えないといけないし、鍵盤を端から端まで使うので、動きやすさ、弾きやすさも考慮しなければならない。

第一センスがないので、そのあたりは我が家のオシャレ専門家の“母”に付いてきてもらい、一緒に見立ててもらった…色は気に入ったが、何だか私が苦手な“着こなしが難しそうなブラウス”だった。

こうなったら当日、母にスタイリストとして、頑張ってもらうしかない。

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本番当日に向けて、来てくれそうな友人や昔お世話になった上司等、何人か声掛けさせてもらい、都合の付く方々が来てくれて、とても嬉しかった。

父は仕事の都合で来れず、私は母と来た。母も「行く!」と言ってくれ、音楽好きだし、聴きたさ半分、何より心配半分だったのもあるだろう。

本番前にリハーサルみたいな感じで、鍵盤の感触を確認させてもらえた。

今回のピアノは“スタンウェイ”で、それまで私は恥ずかしながら知らなかったが、高級楽器で、そうそう私のようなものはお目にかかれないピアノだった。

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いよいよ、私の番がやってきた。

小6の時より、だいぶん大きなホールだった。トリなので皆演奏を終えて、席は結構いっぱいだった。

「譜面を持たずに弾くのがカッコイイし、どうせ照明で見えないから、暗譜あんぷで。」と先生に言われたが、心理的に無理だったので、この時は持ち込んだ記憶がある。

もう私のこの重い身体すらが、フワフワ浮いているような気がする。

先生に励まされて、舞台に立った。

照明がまぶしすぎて、クラクラする。

お辞儀をして椅子に座ったら、“まな板の上の鯉”だ。

覚悟を決めて、弾き始めた。

…しかしやはり緊張すると、あれだけ練習してても、思うように手が動かない。

鍵盤の上で、私の指がスケートのように滑ってしまい、うまく弾けない。

しかも先生に言われた通り、譜面は照明が反射して、ほとんど見えなかった。

何だかよく分からない間に、私のルパンは終わった。

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その後来てくださった方にお礼を言った。

元上司からは「結構、ミスっとったな。」と言われて、頭をポリポリとかいた。

概ね友人の反響は良かった。友人の一人が今回の演奏をDVDに収めて送ってくれた。

高校の同級生とそのお姉さんにも会った。お姉さんの子が同じセンターで違う先生に習っていたらしい。

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それから数日後、先生から反響を聞かせてもらった。

評判は良かったようで、私のような曲を弾きたいと言った子も、結構いたらしい。

偶然やりたかったことが、他の生徒達にもいい影響を与えたのなら、お役に立てて良かったと思った。

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それ以降、やめるまでの間、それぞれ違う曲で、何度か発表会に出た。

スタンウェイのホールも何度か出たが、例の同級生のお姉さんがご主人と共にファンになって下さったらしく、ルパン後、毎回私の演奏もビデオに撮って、DVDに焼いて渡して下さるのである。

「子供たちが、ルパンのような曲ではないのに、最後弾いたら手を上げるんです。」

それを聞いて苦笑するしかなかった。私は真剣にやっているのだが、曲によっては不要なので、子供たちはその辺が分からず、憧れ、もしくは面白半分で真似してしまうのだろう。

「私のファンなんて…。有り難いなぁ、そんな人おるんや、めっちゃ嬉しいな。」と素直に思った。なかなか住所を教えて下さらなかったが、やっと教えてもらい、お菓子を送らせてもらった。

また違う所での発表会も出させてもらい、私よりもっとすごい曲を上手に弾いている人から、「プロの方ですか?」と聞かれたことがある。

「いえ、とんでもないです!ただのド素人です。(苦笑)あなたの方がすごくお上手だし、今回ラプソディ・イン・ブルー弾かれて、とても良かったですよ。私もあの曲弾くの、憧れてますから。」

私が発表会で上手に弾けたのは、ただただ、先生の指導のお陰である。
曲は私が好きで選んでいるが、先生の指導がないと、魂の入った弾き方は私の場合、できない。

発表会は緊張するが、演奏を喜んでもらえたということを聞かせてもらうと、嬉しくてまた参加したくなる。

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先日久々に、夫に結婚時に買ってもらった電子ピアノを弾いてみた。

全然練習してないし、譜面も読みづらくなり、まともに弾ける曲がほぼ無い。

でも全部弾けなくても色々弾いてると、段々思い出したりして、とても楽しくてあっという間に時間が過ぎる。

ピアノの音は本当に好きだし、癒やされる。

また習いに行きたい。
何なら、発表会にもまた出たい。

仮に習えなくなったとしても、「細く、長く」生涯続けたい趣味なのである。

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