自分の鶴嘴で鉱脈をがちりと掘り当てるまで
夏目漱石『私の個人主義』を読んだ。(2020/7/28読了)
読んでほしい人
・これから就職する人
・自分に自信のない人
・自分の人生に不満を抱いている人
・他人から褒められると却って不安を感じる人
・自分の幸福のために、どういう心持ちで生活すればいいかを知りたい人
この本の内容
この本は夏目漱石の講演集であり、「現代日本の開花」「道楽と職業」「中身と形式」「文芸と道徳」「私の個人主義」の5つの講演が収められている。
今回はそのうちの一つ、「私の個人主義」の読書感想文を書きたい。
「私の個人主義」は、夏目漱石が大正3年に学習院大学の学生に向けて講演した内容を後に書き起こしたものである。全38ページと短い。
これから世に出ていこうとする大学生に、自分の半生を語り、彼が「自己本位」に目覚めるまでの経緯を語っている。この「自己本位」こそ、人生をより良く過ごしていくための鍵だという。
彼は大学を卒業して、人から薦められるまま教師になった。仕事はちゃんとやれていたものの、「腹の中は常に空虚で、不愉快な思いを抱えていた」という。彼自身教師という職業に何の興味も持てず、自分に教育者としての素質もないと感じていた。
彼はその後イギリスに留学する。英文学を学び、その学問のあり方を深く考える際に、「他人本位」の考え方から、「自己本位」の考え方に転換した。そして、「自己本位」を手にして精神的に強くなり、自分の生涯の事業を見つけていった。
ここで知っておいてほしいのは、「自己本位」とは現代で使われている自分本位とは少し意味が違う。簡単に言えば、自己本位とは判断や行動の基準を自己に置く、という意味だが、これは漱石独自の考え方なので、できれば彼の著作から「自己本位」の意味を読み取ってほしい。
1.読む前の自分
自分のキャリアの選択において、常に安心と自信を持ちたい。
自分の人生これで間違っていないと確信を持ちながら生きていきたい。
今から100年以上前に、夏目漱石が学生に人生のアドバイスを語ったというので、実際にどんなことを語ったのか知りたい。私も学習院大学の学生になった気分で有名人の講演を聞くつもりだ。
2.気付き
夏目漱石ほどの人間でも、自分のキャリアに苦悩と不安を感じていたことを知った。しかも、学生時代から30歳近くまで、ずっと。
東大出身なのに!お札にもなっているのに!意外!
彼の悩み悶える心の声を読んでいると、
「私はここまではっきりと心のうちを言葉にすることはできないけど、これに共感できるということは、私も漱石と同じように激しく焦っているし、人生に不安を感じているんだな」と気づくことができた。
「この世に生まれた以上何かしなければならん、といっても何をして好いか少しも見当がつかない」
めちゃくちゃわかる。私も、せっかく生まれたのだから、何事かを為し得たいと思いながら生きている。そういう人は多いはず。昔の人も同じ事で悩んでいたんだな。
自分の思いを言語化できない代わりに、漱石がやってくれた。それだけでも、かなり救われた。
彼は若者たちにこうアドバイスをする。
直接本文を読んでもらった方が伝わると思ったので、たくさん引用した。この3つはあくまで私が勇気をもらった箇所なので、あんまりピンとこない方もいるかもしれない。ただ、この本の中には普段の生活では決して出会えない金言がたくさん眠っているので、興味のある方はちらっとでも読んでみてほしい。
また、漱石の小説を読んだことがある人は、漱石の話し言葉の優しさに驚いたのではないだろうか。この本は講演集なので、小説よりかなり読みやすい。難しい言葉はほとんど使っていない。それでいて、さすが小説家というか、言葉の使い方が秀逸。平易な言葉で心を鷲掴みにしてくる。
まとめると、
「自己本位」は「自分で考えて進む」ことだろう。本物の安心と自信を得るためには、「自分の鶴嘴で鉱脈をがちりと掘り当てる」まで、自分主体で人生を突き進むしかない。
漱石はこう言っているのではないだろうか。
気付き①:漱石でも自分のキャリアに悩みを抱えていた
気付き②:「自己本位」の考えが大切。結局、それが自信と安心を与えてくれる
3.今後どうしていきたいか
この本を読んでも、夏目漱石が自分の悩みを直接解決してくれるわけではない。でも、彼が自分と同じくキャリアに悩みを抱えていたこと、そして彼が実際に悩みを解決するまでの過程を知ることができる。偉人による励ましと、彼が辿り着いた「自己本位」の考え方を知ることは、自分の人生をより良く進めていくための大きな後押しとなる。
自分の幸せのために、自分の人生は自分で考えて判断して進んでいかなければならない。これを忘れずに生きていきたい。
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