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卒業式のすち子

2023年3月22日。晴れて大学の卒業式を迎えた。

  私の大学生活をずっと応援してくれていた夫と、卒業旅行と称して出席してきた。3月の東京はもう春で、ずっと北国で暮らしてきた私は、人生初の桜の咲く卒業式というものを体験した。

 学科ごとの総代が会場で卒業証書を受け取る様子を教室のテレビで見る。その後、教室で学科長から一人一人卒業証書を受け取った。
 今年の通信課程の卒業生は100名程で、私の学科には30名程が出席していた。学科長が、しっかりと私の目を見てにっこり微笑んで卒業証書を手渡してくださった。とても嬉しかった。

 そのあと、一人ずつスピーチがあった。年齢も背景も皆違う中、共通する思いは「学びの楽しさ」「継続の難しさ」そして「充実感」「達成感」だった。皆さんの話に感銘を受け、自分の知らない世界を垣間見た思いだったが、ふと足元を見れば自分も今その中の一員であり、今この場所に居られることが、とても幸せだった。

 式が終わり、夫との待ち合わせ場所に向かった。
 うららかな春の陽光の中、キャンパスを見渡せるテラスで夫がご満悦で待っていた。

 通学部も同じ日程で行われたので、午前の部と午後の部が交代するこの時間、キャンパスいっぱいが着飾った女子大生の渦。これほどの数のきれいな人の集団は後にも先にも見たことがない。笑顔と、笑い声がはじけ飛び、喜び、幸福、希望という明るさだけ存在する夢のような空間。

 ご満悦夫の笑顔をみて、「ああ、私、大学生になってよかった!」と思った。

 さて、この時、この美しい大集団をバックに卒業証書を胸に抱く私の写真を撮ってくれたのだが、、、
 あとからみたら、そこにいたのは、すち子だった。
 実は数日前に、東京に行く!卒業式に出る!と、気合を入れて髪の毛を切りすぎた。おかっぱ頭になってしまった。
 眼鏡さえしていないが、どこからどうみても、すち子がにやりと笑って卒業証書を抱きしめていた。

 それでも、やっぱり、その写真は幸せが溢れていた。


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