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地下アイドルと人生のモラトリアム

こんな楽しい毎日がずっと続くといいのになあ
20代後半の頃に書いた文章やSNSを見ていると、やたらこのフレーズが出てくるんです。

私はあの頃女子アイドルライブに通っていました。
よくライブが終わった後に地上に出る階段を昇って夜空を見上げてはこう思っていた気がします。
都会の空に星は見えなくて、階段上で煙草を吸っているお兄さんたちの横で飛行機のライトが点滅しているのをぼんやりと見ていた。

私はあの頃仕事も充実していて、趣味にも走り回って毎週のように新しい友達が出来たりして楽しい毎日を過ごしていました。
みんなと歩いた渋谷や新宿の街並みが今でも懐かしく思い出されます。

あの時私は、こんな毎日は、若くて楽しい時間はずっと続かないって分かっていたんです。
転職するにも結婚するにも期限が迫っているような気がしていた。
人生で真剣な恋愛はあと1回か多くて2回くらいしかできないような気もしていたし。
日々の選択で人生が変わってしまうことを感じていました。

楽しい一方で、プライベートも仕事も悩みでパンパンになっていて、そういうのを気軽に話せる人もいませんでした。
この頃は仕事でも重めの相談をされることが多く、私は人の感情まで吸収してモヤモヤと悩みまくっていた気がします。


日々選んだ答えが正解かどうか分からなくて、それが将来の自分に重くのしかかっていくのを感じていました。
特に29歳の時は、学生時代に燦然と輝いていたはずの未来が現実に呑み込まれてしまって、無限にあったはずの人生の可能性が日に日に減っていってしまうような気がして切なかったです。

大学生の時の私は自分が30歳になる日なんて永遠に来ないような気がしていたんです。
いつかは死ぬ、と同じくらい想像が付かないことでした。

昔かんぽ生命のCMでのんちゃんが「人生は夢だらけ!」と瞳をキラキラさせているのを見て母が「こんな若くて可愛い子に言われても響かないわね」とシニカルに呟いていたのを思い出しました。

あの頃ライブや他の趣味で仲良くしてくれた同世代の方々はその後結婚したり子どもが産まれた人もいるし、転職したり転勤したり、趣味に邁進したり仕事でくたくただったりと色んな人生歩んでいるみたいです。
消息さえ分からない人もいるのですが、もう友達とは言えなくても幸せにやってくれているといいなと思う。

なんかね、みんな似たようなことを感じていたのかなと思ったことがあって。
ある日知り合いの同世代の人がライブハウスで急に「30歳になったらこんな生活やめるんだ、もうライブには来ないしもっと真面目に生きるんだ」みたいなことを言い出して、その横顔が妙に寂しそうだったような気がして。
何を思っていたのか詳しく聞いてみたかったけど、曲と曲の間の時間だったのでうまく話すことができなかったんです。

何を選んでも、選ばなくても失うものはあるし、後悔することもきっとあるんだろうな、と感じたりして。

私は「もう嫌だ~何もかも忘れて楽しくやりたいー」と、夏休みの宿題やらずに遊んでいる小学生みたいな気分になり、人生なんてどうでも良くなって女性アイドルにはまりまくっていました。

あの頃迷走していた私に優しくしてくれたアイドルさんには感謝しかありません……。
お若いのに人間できてる人ばかりでした。

突然こんなことを言い出しても変だし、直接言ったことはないけど私はみんなと過ごせて本当に楽しかったよ。人生の宝物です。



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