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権利も絶対ではない

【 自己紹介 】

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このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけにその年の12月からブログを始めて、それからブログ更新してきました。しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。

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【 今日のトピック:権利と権利がぶつかる 】

今日はちょっと、弁護士ちっくな話です。司法試験の憲法の問題で出題されそうな話題です。

権利と権利がぶつかったときに、どう調整するのか、というが争われることがあります。

典型は、表現の自由(報道の自由)とプライバシーでしょうか。マスコミは、芸能人の不倫を報道しまくっていますが、不倫なんて、めちゃくちゃにプライベートな話です。

例えば、テレビ朝日が僕の不倫を全国ネットで報道したら、僕は報道された当日に訴状を裁判所に提出して損害賠償を請求するでしょう。

僕のプライベートを全国ネットで晒すなんて、プライバシー侵害があまりにも甚大です。いちどさらされた情報は、永久に消えないので、僕だったら、バレちゃったのは仕方ないと割り切って、ハチャメチャに多額の損害賠償を請求することに振り切ると思います。

しかし、芸能人や政治家の不倫は、全国ネットで堂々と報道されています。不倫がプライベートな話題なのは明らかなのに、どうして、これが許されているのでしょうか。

芸能人は、マスコミに対して損害賠償を請求することはできないのでしょうか。はたまた、不倫報道は名誉毀損罪にならないのでしょうか。

ここでは、「プライバシー」という権利と、「報道の自由」という権利が衝突しています。どちらも大切な権利ですが、衝突しているので、どちらを優先するか決めなきゃいけません。

ただ、どちらかを必ず優先しなきゃいけないわけではなくて、一定の基準を設けて、その基準に従って、プライバシーを優先すべき場面と、表現の自由を優先すべき場面を振り分けるわけです。

損害賠償の場面であれば、「ノンフィクション逆転事件」という最高裁の判例があって、これによると、公表する理由よりもプライバシーが優越する場合は、プライバシー侵害を理由に損害賠償を請求できる(=プライバシーが優越する)とされています。

「公表よりもプライバシーが優越する場合は、プライバシーが優先される」という、理屈のようで理屈になっていない基準なんですが、まあ、これは、結局、その事案で制約されたプライバシーがどんな内容なのか(どんな秘密がバラされてしまったのか)と、それを公表した理由及び公表した相手が誰なのか、ということを考えることになります。

そして、常識に照らして、「それは、報道しちゃダメだよね」と思われる場合に、プライバシーが優先されることになります。

一方、刑事責任の場面では、刑法230条の2という条文があって、

・公共の利害に関する事実を、
・専ら公益を図る目的で報道し、
・報道が真実である

という場合には、名誉毀損罪が成立しないことになっています。

そして、「夕刊和歌山事件」という最高裁の判例によって、報道が真実でなくても、確実な資料・根拠に基づいて、誤信したことにも相当な理由がある場合は、名誉毀損罪が成立しないことになっています。

このように、プライバシーと表現の自由(報道の自由)がぶつかったときは、何かしらの調整が入ることになっています。

「権利!」「権利!」と叫んでも、それが他の権利と衝突していたら、譲らなきゃいけないこともある、という当たり前のお話を今日はお送りしました。

それではまた次回!・・・↓

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