リュッケルト「きみはぼくの魂、きみはぼくの心……」(ドイツ詩を訳してみる 26)

Friedrich Rückert, Liebesfrühling (1821) III

きみはぼくの魂、きみはぼくの心、
きみはぼくの歓び、きみはぼくの痛み、
きみはぼくが生きるぼくの世界、
きみはぼくが昇るぼくの空、
ああ きみはぼくが葬り去った
ぼくの悲しみが永遠に眠るぼくの墓!
きみは安らぎ、きみは癒し、
きみは天からぼくへの贈り物。
きみの愛ゆえにぼくはぼくを大切に思える、
きみの眼差しがぼくの眼前でぼくを別人にした、
きみの愛がぼくをぼく以上の高みへ導く、
ぼくの天使よ、ぼくにまさるもう一人のぼくよ!

(志田麓・喜多尾道冬の訳を参考にした。)

Du meine Seele, du mein Herz,
Du meine Wonn’, o du mein Schmerz,
Du meine Welt, in der ich lebe,
Mein Himmel du, darein ich schwebe,
O du mein Grab, in das hinab
Ich ewig meinen Kummer gab!
Du bist die Ruh, du bist der Frieden,
Du bist der Himmel mir beschieden.
Daß du mich liebst, macht mich mir werth,
Dein Blick hat mich vor mir verklärt,
Du hebst mich liebend über mich,
Mein guter Geist, mein beßres Ich!

 *

新春最初の訳詩は、CHIHARUさんのリクエストで、フリードリヒ・リュッケルトの詩集『愛の春』の中の1編です。

畳みかけるような冒頭が印象的ですが、「きみ」と「ぼく」の氾濫する原詩と虚心に向き合うと、特に最後の4行が思いのほか手強く、決してただの情熱的な愛の詩にはとどまらないものでした。

 *

もともとは無題の詩ですが、これに基づくローベルト・シューマンの歌曲「献呈」(Widmung, 1840) が有名です。

フランツ・リストによるピアノ編曲 (1848) もよく演奏されます。


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