見出し画像

チョコレート・猫の舌

 どこからともなく梅の花の香りしてきた。
 近くにある紅白の梅の木から。
 
 たくさん雪が降って、何かが終わって何かが始まるような予感がした。
 
 いつになく忙しさが続いていて、気がつくとバレンタインデーが近い。
 お菓子メーカーに勤めていて、仕掛ける立場だったチョコレートを贈る習慣。
 当時は、前年の夏から秋にかけてすでに商品のデザインや企画、販売計画は決まっていて、いざ、バレンタインデーはというと、季節外れな気がしたものだった。

 前より下火なのだとは思う。 
 しかし、相変わらずチョコレート売り場が混んでいで、その前をかき分けて歩いていたら、人酔いしてしまった。  
 
 猫を飼っている私は、デメルの「猫の舌」が大好きで・・・今は、猫ラベルというのかしら。 

 なんとも可愛い。
 たまに、うちの猫が舌をしまい忘れている時の、あのお茶目な感じ。



 自分で自分にプレゼントしようとしたら、猫ラベルは驚いたことに以前よりかなり高価になっていた。
 それでも、フレーバーごとの色違いで並んでいる猫のパッケージが好き。

 デメルの木箱に入ったザッハトルテを、バレンタインデーにプレゼントしたことがある。
 ウィーンのザッハホテルに行ったのは、20歳の時だった。
 生意気な子供に見えただろう。
 チョコレートと生クリーム。
 すごく美しい男の人が給仕してくれたのを覚えている。
 
 濃い珈琲とチョコレート。
 湯気の向こうの窓から、雪が残る2月の街が見えていた。
 
 
 
  

この記事が参加している募集

書くこと、描くことを続けていきたいと思います。