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ハーバードに入学したばかりの時の話

携帯はどこで契約すればいいのか、銀行口座はどうやって作るのか、自分の寮までどうやって荷物を移動しよう。友達って国が違っても自然にできるものなのか。というか、私ちゃんと24時間英語の生活できるのか。しかも、ハーバードで。

心の準備も何もない。大学1年生になる夏。飛行機を降りたところか、タクシーに乗ったところか、ホテルに着いたところからか。それまでの生活とは180度角度を変えた新しい生活が始まった。今までとかけ離れすぎて、想像することも、それをもとに準備することもままならなかった。自分が憧れに憧れた大学。合格が決まっても、入るまではちゃんと夢みたいな感覚もあった。憧れのパートはここで終わり。ここからは、現実として、酸いも甘いも自分のもの。

海外の大学ということはもちろん、学校の「当たり前の慣習」みたいなものも日本のそれとは異なる。8月の中旬に渡米すると、入学式より何より前に、1週間ほどにわたるオリエンテーションが始まる。そのオリエンテーションのさらに前に、行きたい人だけがいけるプリオリエンテーション。私は留学生のためのプリオリエンテーションにも参加した。そして見事に、その最初の5日間だけで、既に私は、当たり前だけど大きな壁を見ていた。

留学生だけどみんな、英語をスムーズに話す。普段から使い慣れてますよ感が出てる。私みたいに、「学校で習っていて得意だったし受験もクリアしたけど英語を使って24時間生活するのは今回が初めてです」みたいな人はほぼいなかった。留学生のオリエンテーションは、つまりアメリカ人以外のオリエンテーションということで、学生の約1%ほどだ。だからこそ「留学生同士助け合いましょう」みたいな趣旨なんだけど、みんなの心配は例えば初めての国で暮らすことや文化に慣れることで、誰も、英語で友達を作って英語で授業を受けて英語で24時間生活を送ることに心配を抱いている人はいなかった。だから私もそんなこと大声で言えるわけない。考えてみれば当たり前だ。ハーバードだ。しかもそうじゃん。アメリカ以外の国でも結構英語使われてるよね。インターナショナルスクールに行っていた留学生もたくさんいて、むしろ、インターも行ったことなく英語は学校の授業だけでしたというと、素直に驚かれる。スタートラインが全く違うことは入学式が始まる前からしっかりと実感した。こう言うのも実際、行ってみないと分からないことの一つだ。

留学生のオリエンテーションが終わると、今度は全生徒のオリエンテーションが始まる。これは寮ごとにグループになって行動する。1年を通して大事な連絡や集まりは寮単位で行われることが多いからだ。寮にはプロクターという住み込みで暮らす大学院生や大学の関係者(家族で住んでいたり子持ちだったりする)がいて、また、各寮に下級生の相談に乗ったり面倒を見たりする上級生も配属される。1週間かけて、大学のルールや、クラス選びや、部活や、いろんなことに関する説明と集まりが詰められて、最終日に入学式、そしてやっと授業が始まるのだ。

この授業選びも私にとっては早速の困難だった。ハーバードは入学時に専攻が決まってなく、日本のように「〜学部」という風に分けられた受験があるわけでもない。従って、1年目の授業は何をとってもいい。そう、何をとってもいい、は、あの何百何千とあるクラスの中から好きなものを4つ選びやがれという、いきなりきた人からすればどこからどう手をつけていいか分からない至難の業だったのである。とりあえずチームの約半数と他のアスリートも取っていた、おそらく楽単と言われるであろう授業と、理科系のイントロ、1年生の必修のライティングの授業、そして日本のアニメと宗教に関する授業を取ることになった。楽単と言っても決して楽ではないし、日本のアニメの授業ももちろん日本語で行われるわけではない。私にとってはとりあえず全部、必死単。

そんな中々ハードモードなスタートでも、私は希望と充実感で溢れていた。それはもちろん、ホッケーがあるから。そして結局、その後も4年間にわたってびっくりするようなことが起きたり落ち込むことがあったりもするけど、その思いが4年間私をなんとか進ませてくれたのだ。もちろん、ハーバードにいられること自体が自分の背中を押してくれることもあったけれど、語弊を恐れずにいうとそれがもしも、「ハーバードという名前だから」とか「世界1の大学だから」という理由だけだったら私はそこまで踏ん張り続けることも、転んだ後に立ち上がることも出来なかったと思う。長期休みの後に泣きながらでも飛行機に乗ってキャンパスに戻ったのも、朝から晩まで授業と練習とトレーニングと宿題で終わる1日を繰り返せたのも、ハーバードでホッケーをやることが尊くてものすごく特別でとても大切で、そのためにアメリカに来たからだった。

入学式の前からデフォルトで23名のチームメイトという友達ができ、毎日リンクに通う生活が始まった。私は、幼稚園児が年の離れた小学生の兄弟とその友達を追いかけて回るように、いつもチームメイトの後ろにくっついて行動していた。くっついて行動していたら、あっという間に1年は過ぎた。それだけ毎日が試練でドラマでそして非日常の繰り返しだった。(続く)

【最後に】
今年は本を出したいと思い、ハーバードでの日々、その後の海外生活ついて綴ったものや日々の小さな出来事を書いたエッセイを書き溜めています。この記事はその原稿の一部として下書きしたものです。もし「いいね」と思った方はSNSで拡散したり、お友達にお薦めしたりしていただけたら嬉しいです♡

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月咲

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