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今村夏子と小川洋子

今村夏子の短編集『父と私の桜尾通り商店街』を読み終わった。表題作にちなんでいると思われる、デコレーションされたコッペパンの写真が可愛い装丁の本で、そういう雰囲気の話なのかな、なんて無意識に思って手に取った気がするけれど、そんなことはなかった。「気味がわるい」と思いながら読んでいた。『こちらあみ子』ほどではないものの、人間の不気味さを感じる。

『むらさきのスカートの女』を読んだときに思ったけれど、今回も小川洋子に似ているなと思った。「似ている」なんて安易な感想は失礼だと思いつつ、今のレベルの自分から出てくる率直な感想ではある。
人間の綺麗じゃない部分を描いて奇妙なおかしみも感じさせるところ、登場人物がズレていて時に狂気を感じさせるところ。それから、今回はヒトの身体の部分を取り上げるお話もあったので、なおさら。
ただ、小川洋子を読んでいて気分がわるくなることはあまりなかったと思う。小川洋子の方が御伽噺めいていて、今村夏子の方がリアルに感じるからかな。
調べてみたら、小川洋子は『こちらあみ子』の太宰治賞や『むらさきのスカートの女』の芥川賞の選考委員だったのだな。(出典はすこし古いけれど)"応援団"だそうで、「自分の中にあみ子を見つけられない人とは友達になれないかもしれない・・・」とまで言っている…。や、社会とズレていることはシンパシーを感じる面もあるから、まったく分からなくはないのだけど。

文庫本の解説がまた面白かった。ライターの方が著者とのインタビューでのやりとりを紹介している。作品の着想の元を知れて面白い。著者の人柄も感じられた。人付き合いが苦手という発言に親近感を覚える。
驚いたのが、"毎回ハッピーエンドにしたいと思うのに、そうならない"みたいに書かれていたこと。「ハッピーエンドにしたいって、ホント?!」ってなった。



装丁のコッペパンの候補はいろいろあったよう。いや、いずれにしてもナゼこんな可愛い装丁になったのか。


最後までお読みいただいて嬉しいです(^^)/