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〜自粛が続く今こそ〜「筋肉の維持に必要なHMBとは!?」

はじめまして、研究テームの山根です。現在は病院で作業療法士としてリハビリテーション科に所属し、NST(Nutrition Support Team)専門療法士として、患者様に栄養・食事指導を通してリハビリテーションを行っています。

2020年は新型コロナウィルスの影響で、私たち医療従事者や研究者が参加する学術集会もオンライン開催に。楽しみにしていた対面での会話や議論を行うことができず残念ではありましたが、オンライン開催のおかげで同時開催されていた国際学会へも参加できました。ある先生の基調講演では、スライドは自動再生され、音声は原稿をA Iが読み上げ、講演者の姿や声が全く出てこないという最先端のテクノロジーが駆使され、まるでアバターが講演を行なっているよう。近未来はアバターが仕事を行ってくれる日が来るかもしれませんね。

本題に戻り、「栄養」と私自身の研究テーマ「筋肉」のお話をさせていただきます。自粛生活も1年が経ち、以前と比較して運動量が低下している方も多いのではないでしょうか?寝たきりの患者さんの場合、筋肉量は1日に0.5%減少し(1)、さらに栄養摂取が不十分であると筋肉量の減少が加速されることが報告されています(2)。つまり、「食べない」、「動かない」ことが筋肉にとって一番の大敵となります。

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筋肉の維持に欠かせない「ロイシン」

筋肉にとって最も重要な栄養素はタンパク質ですが、その中でも必須アミノ酸であるBCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)というアミノ酸は筋肉のエネルギーになったり、筋肉そのものの材料になり、筋肉維持に有益であるという報告が数多く存在します。BCAAの一種であるロイシンは約5%がHMB(β -ヒドロキシ-β-メチル酪酸)に変換され、この「HMB」は筋肉量や握力、バランス能力、歩行能力の改善に有用という報告(3)があり、摂取すべき栄養素として以前より注目されています。このHMBは、バリンやイソロイシンからは合成されず、ロイシンからのみ合成されるとされています。

HMBと筋肉量

肉・魚を中心としたタンパク質はどうしても不足させやすい栄養素です。不足分を補う、プロテインやアミノ酸のサプリメントは粉末タイプのものが多く、子どもや高齢者には飲みにくく、手軽に補給できないといったデメリットがあります。私自身も臨床業務を行う中で、嚥下障害、食欲不振、低栄養の患者様に、どのようにすれば効率よくタンパク質が補給できるのか日々悩んでいました。

前述しましたHMBを含むサプリメントの多くはタブレット型が多く、非常に飲みやすく、手軽に1日の摂取推奨量である約3g摂取することができます。このHMBタブレットは筋肉量の増加促進、減少の抑制が期待でき、アスリートだけではなく、患者様にも使われています。血液中のHMB濃度は加齢に伴い減少し、四肢の除脂肪量との間に正の相関が認められています(4)。つまりHMBが不足していると筋肉量が少ない状態と言えます。2019年に発表された、複数の研究を統合して分析 (メタアナリシスやシステマティックレビュー)した研究結果ではHMBのみ、およびHMBを含むサプリメントは、効果量は小さいものの、筋肉量と筋力を改善すると示されています(5)。さらにビタミンDを組み合わせることで筋力が増加すると報告されているので(6)、場所と時間を選んで、外へ出て、適度な日光浴も行いましょう。

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HMBの元となるロイシンは赤身のお肉、マグロ、カツオ、卵などに多く含まれており、手軽に摂れるという点から卵がお勧めです。但し、高齢者や子供は、ゆで卵は喉に詰まらせることもあるので、半熟で食べるのが良いでしょう。沸騰したお湯で6分間茹でると出来上がります。ちなみに、私が在住している関西圏では、ゆで卵は「にぬき(煮抜き)」と呼びます。

繰り返しになりますが「食べない」、「動かない」ことが筋肉の分解を進行させてしまいます。活動量が低くなりがちな自粛生活が続く中で、今回はあくまでも筋肉量を減らさない、栄養素のお話をしました。筋肉量の増加を目指す方は、筋トレ=運動が必要です。いつも「食事」と「運動」はセットでバランス良く生活しましょう。

参考文献

1)Wall BT,et al : Nutritional strategies to attenu- ate muscle disuse atrophy. Nutr Rev. 2013 Apr;71(4):195-208.

2)Biolo G,et al : Calorie restriction accelerates the catabolism of lean body mass during 2 wk of bed rest. Am J Clin Nutr. 2007 Aug;86(2):366-72.
3) Cruz-Jentoft AJ, et al : Prevalence of and interventions for sarcopenia in ageing adults: a systematic review. Report of the International Sarcopenia Initiative (EWGSOP and IWGS). Age Ageing 43: 748-759, 2014.
4)Kuriyan R, et al : The relationship of endogenous plasma concentrations of β-Hydroxy β-Methyl Butyrate (HMB) to age and total appendicular lean mass in humans. Exp Gerontol. 2016 Aug;81:13-8.

5)Bear DE et al : β-Hydroxy-β-methylbutyrate and its impact on skeletal muscle mass and physical function in clinical practice: a systematic review and meta-analysis. Am J Clin Nutr. 2019 Apr 1;109(4):1119-1132.

6) Fuller JC Jr,et al : JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2011 Nov;35(6):757-62. Vitamin D status affects strength gains in older adults supplemented with a combination of β-hydroxy-β-methylbutyrate, arginine, and lysine: a cohort study.

\私が記事を書きました/
山根一恭:作業療法士、修士(学術)。NST(栄養サポートチーム)専門療法士。病院のリハビリテーション科所属長として管理・運営・臨床・研究をおこなう。また、専門学校の非常勤講師として「栄養学」を担当しています。

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