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宇多田ヒカルと都会とビルと

都会で聴く、宇多田ヒカルが好きだ。

もっと言えば、ビルがたくさんある中で聴く、ファーストアルバム『First Love』が好きだ。

トラック・リスト
1. Automatic -Album Edit-
2. Movin’on without you
3. In My Room
4. First Love
5. 甘いワナ ~Paint It, Black
6. time will tell
7. Never Let Go
8. B&C -Album Edit-
9. Another Chance
10. Interlude
11. Give Me A Reason
(Bonus Track)
12. Automatic -Johnny Vicious Remix-

アーティスト:宇多田ヒカル
タイトル:First Love
Year: 1999
(http://cdinfo.s201.xrea.com/index.php?itemid=125&catid=1)

思い返せば、このアルバムは私が幼稚園生の頃に車で流れていたものだ。
当時宇多田ヒカルは進撃のニューフェイスとして世を席巻していた。

幼少期に車で聞いていた曲、というのは、なんだか特別な思い入れがあって、みんなそれぞれの「小さい頃親が車で聞いてたんだよね」曲があるはずだ。
情報をインプットする間口が極めて少ない幼少期だからこそ、両親から与えられた『カーミュージック』というのは絶対的存在である。

そして、ある程度大人になってから、ふいに当時の『カーミュージック』をまた聴き始める時がくる。その時に私たちは、懐かしさの打撃にあってしまう。その人にしかわからない風景と思い出を頭に巡らせて、ノスタルジックさに胸を締め付けられるのだ。

私にとってのそれは、『宇多田ヒカル』と『ユーミン』と『SMAP』だった。(アーティスト自体を掘り下げたのはユーミンだけで、あとの2つは特定のアルバムに限定されてしまうのだが)

その中で、冒頭で述べた宇多田ヒカルのアルバムは、大きくなってから聴いてみてそのお洒落さに痺れた『カーミュージック』である。

思えば、私がR&Bの曲調を好むようになったのはこれのおかげだろう。
特に『Automatic』と『In My Room』と『Time Will Tell』はバツグンに私のツボをおさえてくる。

当時青森県に住んでいた私は、青森の、何もないだだっ広い道でよくこの曲たちを聴かされていた。
母は、「本当はこれ、こんな田舎で聴くもんじゃないのよ、都会の真ん中で聴かなきゃいけないの。」と言った。
小さな私は、その言葉を素直に受け取ったのだった。(私の都会好きは母のDNAだ)

だからこそ、ビルが立ち並ぶ都会の昼下がりや、オレンジ色の光の中を車たちが駆け抜ける夜ー この曲たちを聴くと、言いようもない幸福感に溺れそうになるというか、憧れていた場所に自分が立っていることへの高揚感に酔ってしまう。

今、説明会と説明会のインターバルの間、汐留のおしゃれなカフェで、ビルたちを見ながら『time will tell』を聴いている。
今日も今日とて墓石の群れを見てげんなりし、頑張りたいけど頑張りたくないこの矛盾に頭を抱えている私の頭に、宇多田がふと呼び掛ける。

泣いたって
何も変わらないって言われるけど
誰だって
そんなつもりで泣くんじゃないよね

悩んだって仕方ないよ
I just can't control the time
この長いRunwayから青空へTake off!

Time will tell 時間がたてばわかる
Cry だからそんなあせらなくたっていい
Time will tell 時間がたてばわかる
Cry 明日へのずるい近道はないよ
きっと きっと きっと

心なしか、空が青くなった気がする。
20年後にこの曲を聞いた私は、今日のビルの景色を思い出して、懐かしくなったりするのだろうか。

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