姫女苑

ひろびろと長所欄あり花の種をまく

幼稚園受験願書にひろびろと長所欄あり花の種をまく
/春野りりん『ここからが空』


「息子をこの幼稚園にお願いしよう」と思った決め手は、受験願書に大きな長所欄があり、短所欄というものがなかったことでした。
長所と短所は裏返しのようなもの。
この幼稚園だったら、減点法ではなく加点法で子供を育んでくれると思ったのでした。

幼稚園からの連絡帳に「行進の音楽がかかると、みんなきれいに足をそろえて前に進むのに、どうして〇〇くんは踊ってしまうのでしょうか」と書かれたことがありました。
「ちゃんと同じ行動ができるようにご家庭で指導してください」という言葉ではなかったことがとてもありがたくて、家庭からの返信欄にこんなことを書きました。

「音楽が鳴っていると、息子はとても楽しく幸せな気持ちになって、心と一緒に身体も反応して自然に踊り出してしまうようです。たとえば、鉄橋の下にいると、最後の車両が通過するまで、息子は嬉しい心がはじけるままに踊るのです。電車が鉄橋を通過する音も、息子には音楽に聞こえるようです。」

全身全霊で「今」を感じて生きる息子が大好きで、幼いころから個性を型に嵌めてしまいたくはありませんでした。
丁寧なやりとりを繰り返すうちに、先生方も型破りなところのある息子の個性を理解して応援してくださるようになったことを、ありがたく思っています。

あなたのここがだめだと否定するのではなくて、ひとりひとりの個性をよきものとして活かすような働きかけができたらすてきです。
自分を肯定する気持ち、自分を信じる力が、自分を開いて自分を活かすと思うから。

それは、子どもに対してだけではなく、大人であっても同じです。
そして、自分自身に対してであっても、同じだと思うのです。

こんな自分だけれどこれでいい、これがいい、私は私が好き。
自分にそう言葉をかけると、自分のなかの小さな子どもがうれしそうに笑う気がします。

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