超金融緩和の影響について。

 安倍政権下での異次元の金融緩和政策は、長年低迷していたわが国の経済を刺激する重要な手段だった。この政策は経済の原則から大きく外れており、短期間なら有用だった可能性はあるが、潜在的なリスクが指摘されてきた。
 当分の間超金融緩和を続けて、円安という副作用を認めても、症状が顕著ではなかったことから、そのまま継続された。市場への円の大量供給が通貨の価値の下落を招いたが、むしろ、多国籍企業や輸出企業はこれを歓迎した。
 しかし、その副作用が10年以上も累積し、放置してきた点は財務省の不作為で、とうとう重症に至った。一例を2010年と24年で示すと、円とドルの為替レートは81円と151円で、国債残高は862兆円から1080兆円に増加した。
 輸入品が多いわが国では円安により物価が高騰し、国民生活が脅かされている。昨今の異常なインフレは、金融緩和の継続、利益確保、便乗値上げなどがあり、円安だけが原因ではない。救命措置としてこれを阻止するには、為替介入という手段がある。為替介入は単独の国の対応ではなく、国際的な協調が必要で、効果は必ずしも高くなく、限定的となる。
 2024年3月に日本銀行はマイナス金利を解除し、17年ぶりの利上げに踏み切った。長期金利を低く抑え込む枠組みも撤廃し、異常な金融政策を転換したが、金融緩和の程度は調整されても、引き続き維持することとなった。
 金利の誘導目標を0から0.1%に引き上げたことが、予想とは異なり、円安を加速させる一因となった。利上げはインフレを抑制し、通貨の価値を高めるが、もっと高い利上げを期待していた市場の思惑に反して、逆の効果を招いた。
 円安を阻止する方法はいくつかある。輸入品を減らす工夫、原子力発電の再稼働によるエネルギー自給率の増加、インバウンドによる外貨の流入の増加などが考えられるが、根本的な解決策は金融政策のさらなる正常化が不可欠である。
 それには金利の引き上げと金融緩和政策の終了が必要とされる。現在のわが国の金利は0.2%であり、米国の5%に比べると相当に低い。具体的な利上げの程度については、日銀の判断によるが、経済に対する影響を緩やかにするため、一般的には0.25%から0.5%の範囲で行われる場合が多く、これを何回も繰り返し、金利を4~5%に近づける。
 金融緩和の終了は、金融市場への資金供給を減少させて、インフレを抑制する効果が期待される。この副作用を最小限に抑えるには持続的な経済安定化のために極めて重要である。このような対策によって、円の価値は上昇するだろう。

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