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「相談者の目線を大事にしたい」:角井 未央(臨床心理士)

メザニンのカウンセラーに広報室スタッフがインタビューをする本企画。
記念すべき第1回は、臨床心理士の角井未央(かくい みお)さんです。
カウンセラーになったきっかけや、スクールカウンセラーの実際の仕事の様子をお聞きしました。

—— 心理士の仕事を目指そうと思ったきっかけを教えてください。

私が中学生だったとき、スクールカウンセラー制度はありませんでした。色々と悩みを抱えていたけれど、身の回りにも、制度としても、相談できる相手がいませんでした。

その後、スクールカウンセラー制度を知ったのは高校3年生の時です。
自分が悩んでいたあの時、すぐに相談できる人が居たらよかったのにと思って、そんな職業になりたいと考えるようになりました。
そしてスクールカウンセラーになるには、臨床心理士という資格を取る必要があると知りました。

—— 臨床心理士資格を取得するには大学院で学ばないといけません。

当時、地元の広島県では、臨床心理士の資格試験に受験できる指定大学院は広島大学の大学院だけでした。
私がいた大学の大学院は臨床心理士協会から指定をもらっていなかったので、心理学部での4年間を終えたら就職するか、臨床心理士資格が取れる関西の大学院を目指すしかない状況でした。

本当にラッキーだったのですが、大学3年生の就職活動をするか否か決めるタイミングで、大学院に認定が降りてほっとしました。
資格も取れず、就職も決めずに卒業するのかという切迫感が強くて、当時は就職活動をしていた他の人たちよりも焦っていたかもしれません。

—— 角井さんはスクールカウンセラーとして小学校から高校までご経験があります。スクールカウンセラーの現場ってどんな感じですか?

制度としては、相談者は生徒、保護者、先生が対象になりますが、実際には子どもの成長度合いによって異なります。

小学校では生徒よりも保護者の方が来られます。
小学生は自分の内面をうまく言葉で伝えられないのでカウンセリングは成立しません。基本的には、一緒に遊ぶとか、そんな対応になります。
なので保護者を通して本人の悩みを聞いたり、あるいは保護者の方自身の悩みを聞くという形に自然となります。

中学生になると、本人が悩みを話せるようになってきます。高校生になると、もう保護者は来ません。

小学校での相談内容は、体感ですが8割は発達障害に関連するものでした。
友達に行き過ぎたイタズラをしてしまったり、授業中に立ち歩いちゃうとか、集中できなくて先生の話を聞かないといった、いわゆる「問題行動」の相談内容が多かったです。

親御さんが「ウチの子が宿題を全然やらなくて困っているんです」と、最初は担任の先生に相談して、その先生が私に紹介してくれる、そんな流れでした。
もちろん、直接私に相談を持ってきてもらっても大丈夫なんですけれど、そんなに数はなかったですね。

—— 小学生の子が直接持ってくる相談もあるんですか?

数は少なかったですけれど、人間関係の悩みですね。
親御さんは残念かもしれませんが、「宿題ができない」なんて悩みを本人が言ってくることは一切ありませんでした。

「先生、ちょっと相談したい」と私に声をかけてくれて、「あの子が好きなんだけど」とか「あの子が腹立つんだけど、どうしたらいいの」とか。

高校生だと進路の悩みとか、部活の悩みとか、比較的悩みが明確になっています。

私は東日本大震災の支援で地方に転居してきた人のサポートもしていました。その中で、高校生を対象に心理支援をしていました。
生活環境が変わり進路も大きく変わったことなど、変化に対する戸惑いの相談にのりました。

—— 角井さんはこれから、どんなカウンセラーになりたいと考えていますか?

これは私自身の体験ですが、病院に行って体のことを相談したり、あるいはプライベートで他人に相談したりすると、こちらが期待するような話の聞き方をしてくれないときがあります。
そういうとき、私は落ち込みます。一人の相談者の目線で考えた時にカウンセリングではそうでないようにありたいと思います。

お医者さんであれば、的確な診断と処方を伝えられることはもちろん良いと思います。でも、患者さんはそれ以外に求めている部分もあると思うんです。
難しい言葉や、必要なことだけを伝えてくださる方よりも、苦労を労って、痛みを理解してくれる、そんなお医者さんの方が良いと思っています。

カウンセリングは何度も回を重ねて実施されるものです。
カウンセラーは相談に来た方の内面を追求していきますが、相談に来た人からすれば、はじめは話を聞いて欲しい。
徐々に深い話や、相談者が自身を客観視することになりますが、そういったカウンセラーとしての技術的な側面と同時に、まずは相談者目線を大事にしたいと思います。

ちなみに、私には臨床心理士の友人もいますが、私の悩みに対しては「仕事になっちゃうから」と聞いてくれません笑



角井 未央(かくい みお)
大学と大学院で心理学を専攻し、大学院修了後に臨床心理士資格を取得。
10校以上の小学校、中学校、高校のスクールカウンセラーとして勤務。保健センターでは1000件以上の子育て世代の母子支援にも従事し発達相談を受ける。同時に、オンラインカウンセラーとしてカウンセリング業務も担当。私生活では二児の母でもある。

▼角井カウンセラーのカウンセラーページはこちら

インタビュー&執筆:メザニン広報室


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