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夫がお菓子をつくった

先日、突然夫がチーズケーキを作ると言い出した。

少し前から「チーズケーキが食べたい、作ってほしい」と訴えていた彼を私はスルーしていた。

そんなに食べたかったのだろうか。

ケーキ屋さんに買いに行ってもいいよ、と声をかけたが自分で作ると言って聞かない。つまり、食べたいというより暇だったのだと思う。

やると決めたら早く行動に移したいタイプなので、(だいたいのことはやると決めるまでに時間がかかるのだけど)早速スーパーに行って材料を購入し、調理に取りかかった。


嫁「そもそも型とかないけど大丈夫?」

夫「皿でなんとかなるやろ」

嫁「焼くやつ?」

夫「焼くやつ。電子レンジでいける?」

嫁「いや、オーブン機能ないからトースター使って」


という会話だけしてあとは一人で楽しそうに作り始めた。


大丈夫かいな。
と一瞬思ったが、全然大丈夫だった。

しばらくすると部屋にいい匂いが広がってこんがり表面が焼かれたチーズケーキが出来上がった。
美味しかった。


もともと料理はする男だし、家事も日常的にやってくれるタイプだ。
それでもお菓子を自発的につくろうとする行動は学生時代から10年一緒にいて初めてかもしれない。

時間を持て余した自粛期間で、彼の新しい一面が生まれた気がして少し嬉しかった。


数日後、今度は唐突に「クッキーを作る」と言い出した。

チーズケーキの残りのクリームチーズを消費したいのだと言う。
材料を使い切ろうとする心がけが育っていることにも驚いた。夫、けっこうできる男かもしれん。

「焼けたら一緒におやつに食べよう」

相変わらずニコニコ楽しそうだ。

料理は女性の仕事だなんて言葉がホコリまみれになって久しい。けれど、改めて「料理」と「食べる」をセットで一緒に楽しめる人で良かったなぁと思う。


余談だけれど、2人で生きていくにあたっては、どんなことでも「お互い様」だと思っている。

自分が何かしてあげたら同じ温度で返してほしいし、相手が私にしてくれたことは同じように返したい。だから家事だってできる時にできる方がやるし、2人でいる時は大体一緒にやってさっさと終わらせてしまう。

見方によっては見返りを求めると同意なのかもしれないけれど、どんな時でも気持ちの大きさは対等でいたいと思っている。

それがうまく回っているからか「ありがとう」と「こちらこそ」が家の中ではよく飛び交っているし、自粛期間中長く時間を共有していても居心地が良い。


「お菓子つくって〜」と言われてもなかなか腰が重かったけれど、実際に彼が作ったお菓子たちを一緒に食べていると、今度はわたしも作ってあげたいなと思う。
自分がしてもらって嬉しいことは、やっぱり相手にもしてあげたい。

「お互い様」のまわりの土を掘っていけば、根っこにあるのは「思いやり」なのかもしれない。
根腐れしないように、これからも大事にしていきたいものです。

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