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泥臭い青春の日々に思うこと

中学高校の約6年間、剣道部として過ごした。
背が低く小柄な外見のせいか、そのことを伝えるとだいたいは驚いた反応とともにすごい、格好いいねと言葉を添えて頂くことが多い。

実際は、格好いいなんてことはちっともなかった。

そもそも私には運動の才能がない。
ドッジボールも跳び箱もバドミントンもバスケもダンスも水泳も短距離も長距離も。一通りの体育で習うようなスポーツ全般が苦手だった。(特に球技の才能は皆無)

だから、中学で剣道部に入りたいと言い出した私に両親はきっと驚いたことだろう。

自分のスポーツへの才能は棚に上げ、武道という世界に対して漠然とした憧れがあった。か弱そうに見える女子が華麗に悪者をやっつける、とか超格好いい。そんなギャップが理想だった。強い女になりたい!密かな野望を抱く小学6年生。そんな時、名探偵コナンの平次が剣道で犯人を捕まえるシーンに私はすっかり心を奪われた。中学では剣道部に入る!とあっさり決めた。どんな入部動機。

もちろん、本来体を動かすことが苦手な人間が、そんな簡単に強くなれるはずもなく。

試合に出れば負けるか、よくて引き分け。みんなが簡単に取ってくる一本が私にはなかなか取れなかった。未経験で入った後輩に負けることだってあった。悔しくて格好悪い。才能のない自分が恥ずかしかった。だけど一方で、それを恥だと感じていることは周りに悟られたくなくて、平気なふりをずっとしていた。自分のダメさを認めてしまうような気がしてネガティブな感情はずっと自分の心にしまいこんでいた。

そんな中だからこそ、試合に勝てた時の喜びは人一倍だったけれど、たかだか練習試合で勝っただけで大喜びするのも恥ずかしくて、とにかく良い時も悪い時も平静を装う癖がついた。

大した実力はなかったけれど、剣道を純粋に「楽しい」と思えるようになってきた頃には私は引退を迎えなければならなかった。だから高校でも剣道を続けようと決めた。

だけど高校はレベルが違った。中学は人数の関係もあって一応はレギュラーだったが、そんな甘い世界ではなかった。

試合が終わると防具を着けたまま指導を仰ぎに顧問のもとに向かうのだが、周りが長い時間をかけ、身振りを交えながら時には叱責を伴いながら指導を受けるのに対し、私への指導はいつも一言で終わった。自分が期待されていないことを肌で感じていた。いつも辛かったけれど、感情を押し殺す癖が抜けず、弱音も吐けなかった。同級生の仲間は親身になって「もっとこうしたらいいよ」とアドバイスもたくさんくれたけれど、物わかりのいい振りだけをして「ありがとう、頑張る」としか言えなかった。

本当は言いたいことがたくさんあった。

みんなと同じ、もしくはそれ以上に練習してる、頑張ってる。
怪我をして部活を休んだことも一度だってない。
なんでみんなみたいにできないんだろう。
悔しい。辛い。
みんなに私の気持ちなんてわからない。
そのアドバイスも、自分が惨めで辛くなるから本当はやめてほしい。

気を抜けば泣いてしまいそうになる日が長く続いた。だけど、泣きたいくらい辛いとは誰にも言えなかった。それを隠すように、放課後の稽古以外の時間も竹刀を振り続けた。

結果的に、3年間の高校での部活生活を終えて。飛び抜けた才能が開花するようなことは特になかった。だけどほんの少しだけ、力と自信がついた。なんとかの大会で優勝したとかそんな誇らしげなものではないけれど、「これだけやったんだから」というある意味吹っ切れた感情とともに「きっとあんなに練習しなければここまではできなかった」と自分を認めてあげることができた。一緒に頑張ってきた仲間も私が随分変わったということを言葉で伝えてくれた。当時はそれで満足だと思っていたけれど。

今思えばもっと自分の気持ちに正直になって周りに「助けて」と言えばよかったなとも思う。私は自分の成長をなんとか人に頼らず自己完結しようとし過ぎていたし、それくらい自分が必死だということがバレるのが怖くて相談もろくにできなかった。弱いところを見せることそのものが弱さだと信じ、少しでも自分を強く見せることばかりを考えていた。

もしもあの頃声をあげていたら、もしかしたらもっと変わったことも起きたかもしれない。
だけどそれは昔の自分が「助けて」と言わなかったからこそ今思うことであって、当時は私なりに必死に剣道と向き合っていた。だから「どっちもどっち」だし「それはそれ」かもしれない。

今の自分は振り返ってああだこうだと考えてしまうけれど、それでも泥臭い青春時代は色あせながらも光っていてほしいと願う。

余談だけれど、人間は辛い記憶を無意識に美化してしまうそうだ。そうでないと辛いことが多すぎて心が耐えられなくなってしまうからという理由らしい。

多分、私めちゃくちゃ美化してる(笑)

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