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特撮界の伝説が描いた後世に残すべき絵本! 「ウルトラマンをつくったひとたち」作:飯塚定雄

今回は2015年に偕成社より出版された「ウルトラマンをつくったひとたち」という絵本に関して、おすすめポイントを書いていきたいと思います。
こちらの本、半世紀以上に渡って今も愛され続ける「ウルトラマン」がどうやって作られたか?
それを作者であり、本の中で円谷英二監督を探し回る飯塚定雄さんと一緒に見ていくといった内容です。

著者・飯塚定雄氏とは?

簡単に言うと、特撮作品でバトルや破壊シーンに欠かせない「光線」、それをCGも何もない時代に見事に表現した光学作画の第一人者と呼ばれるすごい方です。
代表作としてよく取り上げられるのはウルトラマンのスペシウム光線とキングギドラの引力光線。
単に光線と言っても、細かい粒子的なものもあれば、何本もの光が束になっているものなど様々です。
あれを創造する労力たるや脳がパンクするのでは?と思ってしまいます。
残念ながら2023年3月に亡くなりましたが、2015年には「平成27年度 文化庁映画賞 映画功労部門」も受賞。
近年では「シン・ウルトラマン」にも光学作画で参加されるなど最期まで職人として生きた正にレジェンドな方です。

見どころ

企画から試写までの制作の流れや様子がわかりやすく描かれています。

以下、偕成社の公式HPにある飯塚さんの言葉を引用させていただきます。

「ボクがこの本で言いたいのはさ『ウルトラマン』はもちろん、あの時代の特撮の現場はね、もうほんとうにたくさんの職人がいて、みんな心から一生懸命作っていたってことなんですよ。それはもう、はたから見てると、なんでそこまでこだわるのか作りこむのか、もうバカじゃねぇか笑、ってぐらいなんだ。それでさ、そういうやつらの名前はいま決して前に出ないんだ。そういうやつがいっぱいいたんだよ。オレはさ、あいつらのためにこの本を描いた、そういうわけなんですよ」

https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784032212907

この言葉の通り、スタッフ一人一人が丁寧に描かれています。
セリフや名前はありませんが、監督、カメラマンの助手、スタジオの片隅で濡れた気ぐるみを乾かす人、ミニチュアを作る為の材料を運ぶ人……注目されない役割かもしれませんが撮影現場では重要な役割であり、こういった方達もいてこそウルトラマンは出来上がった、それが飯塚さんの伝えたかった事なのかと感じました。
また撮影の現場では当時の達人の知恵や技が随所に見られます。
科特隊の隊員が巨大宇宙人に捕まるシーンはどう撮影されたのか?
水中で蠢く怪獣はどう撮られたのか?
宇宙空間を飛ぶジェットビートルの内部はどう撮影したのか?
ミニチュアはどう作られているのか?
などなど特撮に関する疑問が視覚的にわかりやすく表現されています。
それ系の本はいくつもありますが、ほとんどが活字メインで、ページ数もそこそこなので大人でも読むのにハードルが高かった感じがあります。
本書は絵本なので子供でもわかりやすく、親子でも楽しめるのがありがたいですね。

まとめ

一言で言うなれば「子供の頃、特撮を観て不思議に思った事を教えてくれる本」だと思います。
絵本なので子供も大人も楽しめるのも嬉しい一冊です。
また何よりも飯塚定雄さんが描いたという事に大きな意味があると思っています。
実際に現場で制作に携わり、その後の特撮界にも大きな功績を残した飯塚さんが名もなき職人仲間の為に描いた、正に後世に残したい、残すべき1冊ではないでしょうか。

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