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【読書⑤】~『最新科学が教える!キャッチャーの技術』を読んで~

昨年の春ごろに読んだ書籍です。

筑波大学硬式野球部監督の川村卓准教授が著した書籍です。

このシリーズは、バッティングとピッチングのシリーズが出版されていて、すでに読んでいました。

引用: https://books.rakuten.co.jp/rb/16489934/

日ごろから大学で教授されていて、野球を研究されている方が、基本的な技術や知識、練習方法、トレーニングメニューなどを紹介されているため、非常にわかりやすく読みやすい書籍です。

今回は、キャッチャーがテーマの書籍ですが、これまでキャッチャーの技術論に関する書籍は、元プロ野球選手がそれぞれの技術論や配球論(経験論)をまとめたような書籍が多かったように感じます。

本書は、そのような書籍とは対照的で、ある選手の経験論ではなく、誰にでも役に立つ一般的なキャッチャーの“教科書”のような書籍です。

ぜひ、高校球児の皆さんや、野球の指導にあたっている方々に、読んでいただきたい書籍です。

引用: https://www.amazon.co.jp/最新科学が教える-キャッチャーの技術-川村-卓/dp/4908804796

さて、本書を読み、私個人として非常に面白く感じたのは、数多くの興味深いデータが多く紹介されていた点です。

今回は、その興味深かったデータについて、紹介していこうと思います。

データの紹介

カウント別打率

【カウント別打率】

(2005~2007年甲子園大会より)

 B-S
 1-0(.168)
 2-1(.168)
 3-1(.160)
 3-2(.162)
  のカウントでの打率が高い

いわゆるバッティングカウントの打率が高いです。

これは、感覚通りだなというデータです。

攻撃時はバッティングカウントでしっかりと狙い球をとらえたいところですし、守備時は他のカウントよりも打率が高いことをしっかり念頭に置いて、状況にもよりますが、丁寧に攻めたいところです。

バント・スクイズ成功率

【バント・スクイズ成功率】

(2005~2007年甲子園大会より)

 B-S
 2-0(96%)
 1-1(91%)
 2-1(100%)
  のカウントでのバント成功率が高い

 B-S
 0-1(81%)
 0-2(50%)
 1-2(52%)
 2-2(50%)
  とバント成功率は低下する
  (スクイズ成功率も低い)

 B-S
 1-0(75%)
 2-0(75%)
 2-1(75%)
 3-1(100%)
  のカウントでのスクイズ成功率が高い

バント・スクイズ成功率も、ある程度感覚通りです。

2ストライクからのバント成功率が大きく下がるのは、やはりスリーバント失敗のプレッシャーがかかるからでしょう。

攻撃側は、ストライクカウントが若いプレッシャーのかかならいうちにしっかりと決めたいところです。

守備側は、ファールや見逃しでストライクカウントを稼ぎ、2ストライクまで持ち込みたいところです。

球種別のバント成功率

【球種別のバント成功率】

(2005~2007年甲子園大会より)

  カーブ  約94%
 ストレート 約84%
 スライダー 約74%
  その他   80%

カーブはバントしやすくスライダーは少しバントしにくいということがわかります。

守備側は、スライダーをうまく使って攻めたいところです。

バントによる得点率

【バントによる得点率】

(2005~2007年甲子園大会より)

 1死  2塁 約45%
 1死  3塁 約79%
 1死2・3塁 約72%
 2死  3塁 約53%

1死2塁の得点率は、
0死1・2塁と比べると約15%得点率が低い

攻撃側は、得点率を上げることを考えると、1死で3塁に進めたいところです。

逆に守備時は、1死で3塁に進められないように、バントミスが起きるような配球をしたいところです。

近年よく言われるようになってきましたが、バントで2塁に進めるよりも打ったほうが得点率が高いため、走者1塁時に相手がバントをしてきたらラッキーだという考え方もあります。

1死2塁の得点率は、0死1・2塁と比べると約15%得点率が低い」ことを考えると、守備時は“バントを防ぐ”という発想以上に、“打者は確実にアウトにする”ことをまず最優先に考えることが大切でしょう。

見逃しストライクの特徴

【見逃しストライクの特徴】

○ストレートの比率が高い
 (右投手対右打者以外は65%以上)

○右投手対右打者は、
 ストレート一辺倒では見送ってもらえない
 (ストレート37%/スライダー27%
  /カーブ15%と続く)

このデータからは、左投手(サウスポー)の重要性が見えてくると思います。

右投手は、変化球もコントロールよく投げる力が必要です。

また、右・左投手ともに、ストレートを磨くことが大事なこともわかります。

空振りストライクの特徴

【空振りストライクの特徴】

○ストレート・スライダーの割合が高い

○右投手対右打者・左投手対左打者では、
 スライダーの割合が高い

○右投手対左打者・左投手対右打者では、
 フォークの割合が少し高い

前述と同様まずはストレートをしっかり磨き、そしてそれに加えて、落ちるボールとスライダーの2種類を最低限でも身に付けたい、ということが見えてきます。

出塁と失点

【出塁と失点】

(首都大学リーグ35試合の分析より)

○先頭打者の出塁は、
 40%の確率で失点につながる

○連続出塁
  失点率 約60~80% 
 平均失点 1.2~1.8点

○2失点以上した場合は、
 約2~3:1の割合で直球を打たれていた

○最も失点率が高くなるのが
 ノーアウトからの連続出塁

○四死球後と安打後の安打率は、
 初球の安打率が高くなる
 特に、四死球後は1割以上高くなる

先頭打者を抑えることはもちろん大事ですが、逆の考え方をすれば60%の確率で失点せずにイニングを終えることができるということです。

先頭打者を抑えられればそれがベストですが、それ以上に連続出塁をされないように注意を払うことが大切です。

配球する際には、バッティングカウント、特に初球に、安易に直球で入らないことです。

逆に攻撃時には、「初球」「直球」に狙いを定めて、連続出塁を狙っていきたいところです。

ピンチの後にチャンスあり

【ピンチの後にチャンスあり】

(2005~2007年甲子園大会より)

○ピンチの後にチャンスが来る確率 約60%
 (0死1塁・得点圏に走者がいる・
  得点が入ったケース)

○高校野球では、ピンチやチャンスが
 1試合中に5回程度起こるケースが多い

試合中におけるチーム全体のメンタル面の浮き沈みがしっかりとデータとして現れているので、面白いなと感じます。

試合で劣勢のとき、相手に得点をされたときには、「この後にチャンスがくる」「1試合に数回はチャンスが絶対にくる」という気持ちをもって、あきらめずに食い下がっていきたいものです。

また、リード時や、自チームが得点を入れた際には、「この後もピンチはある」「相手にも数回チャンスがまだくる」「まだ勝ったわけではない」「勝負はこれから」と、気を引き締めて臨みたいものです。

このデータを選手が知っているかどうかは、メンタルの浮き沈みをなくし、気持ちを安定させてプレーするのに重要だと感じます。

バッテリーの平均安打数

【バッテリーの平均安打数】

(2005~2007年甲子園大会より)

勝った試合では、負けた試合に比べて、バッテリーの平均安打数が高くなる

このデータからだと、ピッチャー・キャッチャーが打つから勝つのか、勝っているときにピッチャー・キャッチャーが打つのかどうかまではわかりません。

ただ守備側からすると、ピッチャー・キャッチャーの気持ちを乗せないように注意を払う必要はありそうです。

ケース別の得点確率

【ケース別の得点確率】

(高校野球のデータ)

 0死1塁 約42%
 0死2塁 約65%
 0死3塁 約81%

このデータは感覚通りで、当然のデータだと思います。

このデータから、守備時には暴投(ワイルドピッチ)・捕逸(パスボール)などによる無駄な進塁を防ぐことが重要なことがわかります。

キャッチャーは、難球処理(ボディストップ)の練習に繰り返し取り組んでいきましょう。

まとめとして

今回紹介したデータは、本書の中のごく一部です。

もちろん同じデータでも、見る人が変われば、データのとらえ方も変わってくると思います。

また、冒頭にも書きましたが、これらのデータ以外にも、基本的な技術や知識、一般的な配球論、練習方法、練習メニューなども紹介されていますので、高校球児の皆さん、特にキャッチャーをやっている球児は、ぜひ読んでもらいたいと思います。

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