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都のラブレター

※都とミケーレのお話のラストシーンは、ミケーレへの手紙で終わる予定でした。その手紙が↓です。

 例えば愛と呼ばれる感情がただの錯覚なのだとしても、私はそれなら錯覚上等だと思う。
 だってそれらが私たちをここへ連れてきたのだし、抱き合わせているのだから。
 この世界に確かなものは何ひとつなくて、どんなものにも何の意味もないというのなら、残るのはその事実です。
 そのときにこそその事実を、私は愛と名づけるよ。
 私があなたを愛していることを、やっぱり今でも私はあなたに伝えたい。あなたに逢って、触れて、伝え続けたい。
 だからたくさんの天気のもとを歩こう。晴れや雨や風や雪の中を。手を繋いでいくつもの季節をくぐろう。遥かに広く遠いこの世界を、ふたりでめぐっていくの。
 けんかをしても、なかなか逢えなくても、例えあなたが私を嫌いになったとしても、私はあなたを好きだっていう事を、どうか忘れないで。だからどうってわけじゃない、私がただ、あなたを愛しているって事を。
 私は忘れない。それでも私たちは恋をした。
 この世界の混沌のもとにありながら、それでも私たちが、かけがえのない恋をしたんだって事を。
 例えば私たちの行く先にバッドエンドしかないのだとしても、それがわかっていたとしても、私たちはきっと同じようにお互いを選んでいたでしょう。
 それこそ途方に暮れるほど、悪意や否運に打ちのめされれば打ちのめされるほど、私はあなたが好きなことを思い知らされるだけでした。あなたに逢う度に恋する私を、自分でもどうすることもできない。私が降伏したその想いは、それ自身は降伏を知らない。そしてそれは別に何かによって鍛えられたり、弱められたりするたぐいのものでもない。ただそうあるものなんだってことを、私たちは誰よりも間近に、皆勤賞で目にしてきた。
 もちろん逆境に一緒に立ち向かうことで絆は強くなると言うけれど、それですら私たちにはお飾りだってこと、あなたもわかっているでしょう?
 そんなカウンターバランスでさえ私たちには必要ない。
 たくさん傷ついたりはんぱじゃなく凹んだりするけれど、いざ私とあなたが向かい合ってしまえばあとはブルドーザー状態です。
 どう転んでも絶望であっても、どうあがいてもな私たちの仲良しを、返上できるわけじゃないからね。
 私たちは幻想を超え、スタークロストな運命をさておいてたくさん笑い、たくさん愛し合った。
 どうしても時間や運命では希釈されなかったこの想いのために。
 そのために存在できたことが、私には、全知全能の神様になることよりも幸せです。
 ミケーレ、私はあなたに逢えて、私があなたと想い合える都であれて、本当によかった。
 何度もあなたとこうして旅をして、その度におかえりを、ただいまを、あなたに言いたいよ。

 ねえ、ミケーレ。
 次はどんな恋をしようか?

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