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スカーフェイス

※負傷したミケーレを心配する都、みたいなシーンでした。

 剣を持ち続ける限り、傷のキャンバスになってしまうミケーレの体。
 自分たちをのせたさだめの前に、人間は否応無く無力だ。どんな肩書きを持ち能力を持っても、そのほんの気まぐれでいとも脆く消え去る灯をともす、非力な存在。
 ――だからこそ私たちはこうして身を寄せあい、相手の弱さを慈しんで護ろうとするのかもしれない。
 私が傷つくことを、私を失う事を恐れてくれるミケーレの腕のなかで、私はこんなにも手放しに、安堵してしまうから。
 自分は怯えているのに、相手を安心させることができるなんて。
 なんて不可解で、甘いことなんだろう。
「都、ありがとう」
 部屋を覆う仄暗い黒。ミケーレの髪の色のような、艶やかな黒い闇。
 死はこんな色をしているのだろうか。いずれ誰もが包まれる沈黙の深淵。
 けれどミケーレを感じられるのなら、その黒はこんなにも愛しく想える。
「私を救ってくれてありがとう」
 火照る体を重ねたまま、唇を触れ合わせて呼吸を交わす。
 ミケーレの胸にぴたりとつけた背中、闇に浮かぶ白い包帯で結んだふたつの身体の左側に重なる鼓動を感じていた。
 私とあなたのいのちがとけあう。
 私はあなたの存在で。あなたは私の存在で。
「お礼を言うのは…私のほうだよ」
 あなたを救う事が出来ることに、私は救われる。

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