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医療面接における専門家の中立性

医療面接における専門家の姿勢について少し考えてみました。今回は初回なので少し短めにまとめてみます。

■医療面接での専門家の姿勢
コーチング、動機付け面接など様々なアプローチがありますが、「専門家の姿勢」がもっとも重要であるという点では共通だろうと思います。
大切なことは専門家が「中立的な立場」を貫くこと。中立であるとは常に「患者の行動に対して、患者を責める気持ちを100%排除できているか?」自問する態度でです。

■ある医療面接セミナーでの出来事
ある医療面接のセミナーに参加した際、禁煙支援の演習場面で、ファシリテーターである講師が「電子タバコの有害性に関するエビデンスはたくさんありますから、皆さん、頑張って下さいね」といった趣旨の解説をしていました。僕はこの講師の解説がセミナー参加者に果たしてどのように伝わったのだろうか?とちょっと気になりました。
医療面接においては、専門家が「自分の方が正しい」と思った瞬間に、面接においてもっとも重要な「中立性」が損なわれてしまいます。ナラティヴ・アプローチではこの中立性を保つために社会構成主義に基づく絶対相対主義の立場を堅守するように自身を戒めています。

■喫煙=不健康=×では医療面接はうまく行きません。
「健康」を優先するのか、「自身の嗜好」を優先するのか、ここは『選択』の問題と捉えるべきです。専門家は相手の生き方を尊重しながら、「健康」を優先するというもう一つの選択を提案するというカタチが望ましいのではないでしょうか?

■結語
しかし、こうした姿勢を確立することは実は容易ではありません。自分が因って立つ枠組み(フレイム)を相対化して、自分の思考が、自分の信じる枠組みに囚われていないかどうかを、常に自問してみる必要があります。専門家が自分の所属している集団の文化をもっとも正しいと考え、その基準によって他の文化を批判することを『自文化中心主義』と言います。例えば、医療者が喫煙習慣をもつクライアント(患者、検診受診者など)をひどく叱責する場面などが良い例です。私たちは毎日の医療面接において、常にこの厄介な『自文化中心主義』と対峙し、それを克服する努力をしていくことによって、医療面接に求められる中立性を手に入れることができるのではないかと思います。私は文化人類学、医療人類学を学ぶことによって、こうした視点を持つようになりました。それについては、今後少しずつお話ししていければ・・と思っています。

#医療面接 #文化人類学 #ナラティヴ・アプローチ


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