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【あのシーンの裏側解説】ドラマVIVANTを見て社内IT部門経験者が思ったこと


▼この記事でわかること

 (本記事はドラマ『VIVANT』の内容を含みます。)
 2023年夏に大はまりしたドラマ『VIVANT』。広大なモンゴルの景色や魅力的なキャラクターなど全体に引き込まれて楽しませて頂きました。
 が、社内IT部門経験者としてどうしても気になってしまったことが…。
 それは主にドラマ第3話にあった以下のシーン。

『VIVANT』のあのシーンを分析

【丸菱商事内で犯人をつきとめる経緯】
・社内稟議をシステム上で書き換えた人を突き止めるため、
・「社内システムへのアクセスログ」や「入室ログ」を参考に、
・「迅速に」犯人を割り出し、
・IT担当者が、「1人で」かっこよく偉い人に向けプレゼン

※一部まるっと書いています

 これ、数多くの社内IT部門を見てきた私からすると、とっても難しいだろうなぁと思いました。。。
 今回は、なぜ上記のシーンが現実的には難しいのか、実際にこれを大企業でやろうと思ったら裏側で何が起きるのか、妄想含め分析してみたいと思います。(もちろん、会社によって各事情が異なりますので、その前提でゆるーく聞いてください。)

▼IT部門に待ち受ける3つの壁

①【組織の壁】あのシステムはうちの管轄ではないです…

 突然ですが、「自社のビルを建てるのはIT部門ですか?」。違いますよね、主に総務部門が出てくると思います。では、ビルの入退館システムのログはだれが管理していますか?そう、ビルを作った総務部門です。
 よって、そのそもこの『システムログ』と『入退館ログ』を全部IT部門が管理してすぐに情報を出せる、というのは少し違和感を感じます。
 もちろん総務部門が管理をIT部門に託していることも多いと思いますが、いずれにしてもログ収集権限や最終的にデータを開示するかなど責任は総務部が保有すると考えます。となると、VIVANTドラマにあったようなスピード感で情報収集ができるのは、よほど総務部長とIT部長が蜜にやりとりして、あらゆる通常必要な手続きをすっとばしたんだろうなぁ、すごいなぁ、と遠い目になります。

②【管理者権限の壁】IT部門だとしても、気軽にアクセスログは出せない

 ではアクセスログの話として、特定の時間に特定のシステムにアクセスした人を抽出する作業ですが、これには確実にシステムの『管理者権限』が必要となります。(一般のユーザ権限ではなく、ログを見たり、ユーザを削除したり、システムの致命的な設定変更ができるごく限られた人が持つ権限を指します。)
 よって、IT部門の担当者が「出せ!」と言われてすぐ出せるものではなく、管理者権限を付与してもらう手続きをしたり、管理者権限を持った人を呼び出すことなります。また、大きい会社であれば管理自体をアウトソース(外注)して別の会社が担っている場合もあるので、その場合には委託先の会社を急遽呼び出して対応してもらう必要があります。もちろん、いち担当者同士でやりとりしても、その時間外対応の費用はどうするんだ、など細かい話になってしまうので、IT部長から委託先の偉い人に直接電話してイレギュラー対応して動いてもらうことになります。
 ドラマに出てきた丸菱商事さんほど大きい会社であれば、このようなやりとりがあったのではないかと推測します。

③【報告業務の壁】皆で顛末を記録・報告しておかないとね…

 ①、②を乗り越えてようやく色んなログが出せたとします。ただここまで述べてきたように、色んなイレギュラーを実施して、各手続きをすっとばしていますよね。すると、この案件に関しどういう根拠で権限が付与されて、各情報を偉い人に提示したのか、また、その報告時に偉い人の反応はどうだったのか、追加の依頼事項はなかったのか、など諸々を記録しなければいけません。また、ここは私の得意分野ではないですが、会社に損害を与えた社員に対する対応を考える人事部も他人事ではないですし、あまりに大きな自体であれば株主等への対外的な報告の必要有無などを判断するための広報部も出てくるでしょう。
 よって、かなりの難所を超えてようやくたどり着いた報告の場にIT部門の担当者が1人でいる、ということは本当にびっくりでした。実際にやるすると、少なくとも以下メンバは勢ぞろいで会議室の酸素が薄くなっていくのではと考えます。(最低でも13人…)

 <報告するための会議室に必要と思われる面々>
 ・【IT部門】部長/稟議システムの課長・担当者/委託先の部長・担当者
 ・【総務部門】部長/入退館システムの課長・担当者
 ・【人事部】部長/個人情報保護事務局/危機管理委員会
 ・【広報部】部長/担当者

▼あんなにかっこよくはできない

 色々書きましたが、ようは大企業の中で大きな事件が起きると、それは色んな部署に影響を及ぼすということです。IT部門だけでは対応できず、社内の関係部門、はたまた社外の委託先まで巻き込む事態にもなりかねません。
 よって、とにかく…悪いことはしないようにしましょう。真面目に働いているIT部門の担当者が白い目になって休日返上で対応する姿が目に浮かびます。これ以上被害者を生まないように。
 

以上、今回はすこしおふざけも交えたIT部門の裏側をご紹介しました。
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