「色日記」という日々

私は2021年5月23日から2024年2月16日までの1000日間、「色日記」という制作をしました。
1日1枚、その日に起きたことや感情などを思い出しながらタイトルをつけ、そこから絵の具(アクリルガッシュ)を3色選び、画用紙に乗せてさっと描くという制作でした。色で描く日記、なので「色日記」という名前をつけました。

始めたきっかけは、パンデミックでした。同じような毎日が続いている中で、美大に入って1年が経過した頃、私の中に何も得意なこと、他の人よりもできることがないことに気づいて焦りを覚えていたとき、私の大切な親友に相談をしました。すると親友は「なにかドローイングでもしてみたらいいんじゃない？」と言ってくれました。その日、家に帰って私は余っていた画用紙を適度な大きさに切り、受験の時に使っていた絵の具を取り出して、今日あったことを色で記録することを始めました。あの日から、1000日経ちました。

毎日についてずっと考えていた

「同じような毎日」なんて本当は一つもないのです。誰しもに、どんな季節でも等しく1日があるはずで、やっぱり1日はあっという間だなと思います。大切でない1日なんてなくて、明日も必ず1日がやってくるという確証がないからこそ、1日が尊い。ちゃんと1日を生きるために必要な力はきっと大きいものかもしれないけれど、止まってくれはしないから、ずっとずっと大切に生きていかなければいけない。大袈裟に思われるかもしれませんが、私はこの「色日記」を始めてから、毎日がかけがえのない大切なものになっていきました。すぐに忘れてしまうような日々だったそれまでとは違って、少しでも外を向いてみようとか、もっと成長しようと思えるきっかけになっていました。

1000日描き続けていく中で少しずつルールや探究するところが変わっていったのも面白かったです。最初は色数を4色にしていました。また、初期は自分の好きな色や感情を引き起こしやすい色(楽しいことは暖色で悲しいことは寒色のようなもの)を選ぶことが多かったです。だんだんと、それは違うかもしれないと思い、3色と決めて、色も全く感情とは関係のない色を使ったり自分がやったことのない組み合わせで色使いをしてみたり。見たことのない色をあの小さな画用紙の中で生み出そう、と最終的には目標ができていました。同じ3色でも絵の具の置く場所、ストロークの距離や混ぜ具合で全く違う新しい色が画用紙の中にたくさんできていく、この様子がその日1日に起きた出来事を象徴するようでした。あと絵の具の扱いがだんだんわかってきて、絵の具を躊躇なく盛るようになったおかげで、後半になってくると画用紙がめっちゃ歪んでいたりヒビがかなり入っていたりします。描いている、というよりもなんだろうか、絵の具という素材を使って画用紙に作っていく、ような。

それぞれのタイトルのおかげで、今でも見たらその日の出来事を思い出せることが多いです。歌詞を引用しているときが度々あるのは家にずっといてその歌しか頭になかったときだなぁとか、この人と過ごした日のことだなとか、自分の葛藤や苦悩も見えます。

1000日

おそらく、このまま続けていくという選択肢もあったのだと思います。しかし、この色日記が先述のとおり、「同じような毎日」なんて本当は一つもない、というところから始めました。世界も、私も、少しずつ前を向いているなかで同じコンセプトで続けていくのは無理があると思っていました。色日記が大学生活の中での制作という印象もずっと私の中にありました。正直、ここまで来てしまうとこの先続けるのはいとも簡単にできてしまうと思います。だから、ここからまた先に進むには、成長するには、どこかで、自分で区切りをつけなければいけません。

ちょうど3年とまではいきませんでしたが、節目のような数字に見えたので、ここで終わりにしようと思いました。1000という数字が身近ではないので、全く想像がつかないのですが、ちゃんと数えてみたら1000枚あって、自分でも驚いています。これら1枚1枚が、私の生きて、積み上げてきたいろいろな1000日なのだと思うと、とても愛おしいです。
SNSにただ淡々と投稿しているばかりだったので、たまに感想をいただけるととても嬉しかったです。私の生存確認だとおっしゃってくれた方、投稿を見て1日の終わりを感じていたとおっしゃってくれた方、私の日々でしかないはずの色日記が、色日記という制作を通すことで私の1日に、もしかしたら見てくださる方の1日になっていたのかもしれないと思うと、堪らなく愛おしく、幸せです。

これから

ここ最近は生活リズムの影響でその日の色日記を翌日に投稿する、というサイクルになっており、こちらは大反省なのですが(その日に描いてその日に投稿するというのを目標にしていましたが帰りが遅いと絵の具が乾かなくて…)、今日もなんかそのまま色日記描きそうな気がしてしまいます、もう終わりだよ〜〜

そして、これからは、毎日手を動かすことに重点を置いた新しい制作を始めます。アウトプットだけではなくてインプットもできるように。常々、卒業制作でも気づいたことを実行すべく、ずっと手を動かして、私の中の引き出しが増やせるような、そこからより大きなアウトプットに繋がるような制作を日々鍛錬していくための制作になればと思っています。

こんな風に私はこの1000日を生きました。これが、私の毎日でした。ここまで、ご覧いただいたすべての皆様へ、本当にありがとうございました。これからもこんな未熟な私ですが、制作物ともどもよろしくお願いいたします。

1000日全ての色日記が載っている私のポートフォリオサイトです。↓