食道に住むもの


昼休憩、箸が進まない
目の前のお弁当は私の好きなものしか入っていないのに
お腹が空いてないというより
味がしない
違う、なんだか……

考え事ばかりで箸が進まない
手が動いてくれない
今日もお弁当の中身を棄てた

自販機の前に立つ
どれが飲みたいのか決められず、ぼーっとしている

私の食道はそれでも
自分に食べ物や飲み物をよこせという

椅子に座って楽になろうとした
ひと息つこうとした

なんだか胸が苦しい
何かが暴れている、食道の中で

トイレに行き鏡をみた
首をみた

何かが喉を突き破ろうとしていた
私は気絶した

あれから何時間経ったのだろう
目を覚ますと病院だった

起き上がろうとしたら
医師が入ってきて話があると言った

それは不可解で信じられない内容だった
私の食道に餓鬼が住んでいると

首を切って殺すしかないと言われ
言葉を失う

私はどうなってしまうのですか?
最近の食欲不振についても話した

その餓鬼は人間を食べたがっているというのだ
 食欲不振や味覚がないのもそのせいだという

そう……ですか

意味がわからない

一体何が起きてるの
モゾモゾと喉が蠢く

もし手術してその餓鬼?を殺せば私は治りますか?

それは……と下を向く医師
私はどうなるんですか?

答えてはくれなかった

とにかく手術を急ぐよう伝えた

苦しい
息がしづらくて首がぐちゃぐちゃになりそう

そして手術当日いよいよ私の首から「それ」が出されようとしている

こわくて仕方がない
私は死んでしまうかもしれない

どうしてこうなってしまったの

 数時間後、目を覚ました
 異様を感じた

ボリボリ、ガリガリ
何かを貪っている音がした

私はゆっくり振り向いた
多分、餓鬼とやらがそこにいた
手術室にいる人たちを食べていた


私は首が切られ、折れて横を向いたままだった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?