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【おすすめ本・マンガ】ものづくりへの情熱を学べる、5つの作品を紹介します

子どもの頃から、僕のまわりには、一芸を極めている人が多かった。育った環境で、人は大きく変わる。建築、本、書くこと。「なにかものをつくりたい」僕がそう願うようになったのは、いま考えると必然だったのかもしれない。

そんなわけで、“ものづくり”にかかわる本などを集めてみた。もちろん、世の中には他にもたくさんあるのだろうけど、「僕がこれまでに読んできたなかで心に残っているもの」を紹介してみたい。

この記事が、いつか誰かの参考になったらこれほど嬉しいことはない。

◆◆◆

下町ロケットシリーズ / 池井戸潤

「夢を、つくる」

ものづくりといえば、の定番である。阿部寛さん主演でドラマ化もされた。原作のシリーズは、現在、4巻まで出ている。僕は、昨年からの年末年始にはじめてこの作品に触れたのだけれど、そのエンターテイメント性に圧倒され、ふだんは小説のシリーズものには手を伸ばさないことが多いのだが、4巻つづけて貪るように読んでしまった。

あらすじはなんとなく聞いたことがあったうえに、比較的わかりやすい物語の構造上、結末がどうなるのかは想像がつきやすい。しかし、展開が読める、その致命的すぎる欠陥があったとしても、十二分におもしろいのがエンタメ小説であり、池井戸潤さんの作品なんだと思う。

まずとりあえず、未読の方には、1巻目だけでもぜひ読んでもらいたい。

舟を編む / 三浦しをん

「辞書を、つくる」

ものづくりといえば、建築現場や工場など、比較的大きなものを想像しがちだけれど、本、この小説の場合は「辞書」づくりももちろん当てはまる。

何度か読んでいるお気に入りの小説だが、改めて読み返してみると、「やるべき仕事、やりたい仕事に全力で向き合いたいものだ」と思わされる。

主人公の青年は、出版社の営業部に勤めているが、そこでは「変人」と言われていた。ある日から、新しい辞書の編纂メンバーに迎えられることになるのだが、周りの人間に支えられ、そして、言葉や辞書がもつ魅力に取り憑かれて仕事に没頭していく。

糸を一本ずつ編んでいくように、丁寧に、慎重に、ときには大胆な決断でもって、言葉の大海を渡るべく辞書という名の舟をつくりあげる本作は、何度読んでも色褪せない名作だと思う。

光炎の人 / 木内昇

「光を、つくる」

他の作品と比べると、どうしても知名度が低いということは否めない。僕自身、たまたま書店を歩いているとき、平積みされているのが気になってつい買ってみた。すると、上下巻で800ページ弱ある大作にもかかわらず、遅読の僕がものの数日で読みつくしてしまった。

純粋なものづくりの話なのかというと、ちょっと異なる。ただ、他の作品と共通しているものがある。それは、「熱意」だ。

ときは明治。貧しい徳島の葉タバコ農家で生まれた少年は、働きに出た工場にて、まだ十分に世に知られているとは言えない「電気」の力に魅了される。そこから、ひたすらに技術者としての道を模索しつづける少年の姿に、ページをめくる手が止まらなくなる。

あぁ、また読もうっと。

火天の城 / 山本兼一

「城を、つくる」

これまでの人生で、「好きな小説ベスト5」を挙げろと言われたら、まず迷いなくこれは入れる。もともとこの著者の作品は、ほぼすべてを読破しているぐらい思い入れがつよい。くわえて、テーマが、「城づくり」だ。胸が躍らないはずがない。

天下統一を目前にした織田信長から、安土に城を築くよう命じられた棟梁の岡部又右衛門。ライバルとの争いや、身内に起こる不幸の数々。見どころはもちろんたくさんあるが、やはり何と言っても、城づくりに懸ける者々の想いが、建築にたずさわる身としては胸に沁みる。

いまは石垣しか残らない安土の城だが、それがより一層、歴史の儚さを物語っているようだ。

いっしん虎徹 / 山本兼一

「刀を、つくる」

ふたたび、この著者の小説である。何と言っても、緻密な取材と徹底的な歴史考証で読ませる方なので、こういう「職人系」の話を書かせたら一級品だと思う。

この作品のテーマは、「刀鍛冶」である。歴史にそれほど明るくなくても、伝説の刀鍛冶、長曽祢興里こと虎徹の名前は聞いたことがあるのではないか。彼の夢は、「己が作った兜を、一刀のもとに叩き切る刀を鍛える」というもの。炎と鉄とともに生きる職人らしく、不器用だが、その道への想いはだれよりも厳しい。

著者は、言う。「刀は、振り回すことができる哲学だ」と。武士は、実際に振り回す前に刀を見つめて、自分はどう生きるべきか、死ぬべきかと考えるはず。だから、それをつくる人間も、前向きさと同時に、厳しい冷徹さのはざまで考えていたのだと思う。

バクマン。 /
原作・原案 大場つぐみ
作画 小畑健

「マンガを、つくる」

小説ではないが、ものづくりといえば、僕のなかでは外せないこの作品。ワクワクしながら、そして、恋愛要素もあるのでドキドキしながら、もちろんマンガへの情熱に多少なりとも影響を受けながら、子どものころにはそれしか楽しいことがないかのように夢中になって読んでいた。


この記事を書いていて思ったことは、この世には、マンガを描く人がいて、刀を打つ人がいて、城をつくる人がいて、辞書をつくる人がいて、工場で部品をつくる人たちがいる。そこにロマンを感じて、彼らを、小説やマンガにしたいと思う小説家やマンガ家たちがいる。さらに言えば、この記事がどうとかって言うつもりはないが、その小説やマンガについての感想を書く人だって大勢いるのだ。

そして、それらすべてがものづくりにつながっているんだよな、と感じている。この世に、価値のない仕事はそうない。みんな、だれかの役に立って、だれかのためにものづくりをしている。

この記事の冒頭で、一芸を極めている人と多く出会ったと書いた。一芸でなくても、ふたつでもみっつでもいいのだけれど、どの世界にロマンを感じるかは人によってさまざまだ。だからこそ、自分だけのものづくりを見つけて楽しめる。

さて、僕はこの世界に、何を残せるのだろうか。

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