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【沖縄】戦利品の帰還

本来の姿で力を発揮する、これ程理に適った状態はない。

少し前のニュースになるが、首里真和志町の獅子頭が78年ぶりに沖縄へ戻ってきたという。
獅子頭とは獅子舞を踊る獅子の頭の部分である。

この獅子頭はどこにいたのか?
遠い海の向こう、アメリカにいた。

第二次世界大戦中にとあるアメリカ兵が戦利品として沖縄から母国へ持ち帰っていたのだ。

沖縄の方々の尽力により、獅子頭は78年ぶりに祖国へ戻ってきた。

沖縄の獅子舞について少し話しておこう。
その姿は本土とは異なり、胴体が毛むくじゃらだ。中に二人一組で入り演舞する。
本土の獅子舞といえばお正月であるが、沖縄では旧盆や豊年祭で登場する。

威風堂々たる姿

獅子は、猛々しく動くだけでなく、時に後ろ足で首元を掻いたり、ゴロゴロまわったり、飛び跳ねたりする。
まるで生きているライオンのように動く、ユニークでユーモラスな姿に“中の人”のことを忘れて見入ってしまう。沖縄の獅子舞は魅力的だ。

獅子頭は地域ごとに特徴があるようで、少しずつ表情が異なる。それだけに地元住民に集落の象徴として愛され、慕われてきた。

悲しいことに激しい地上戦の行われた沖縄では人々の命だけでなく、こういった工芸品や絵画なども奪われた。

今回戻ってきた獅子頭は、持ち去ったアメリカ兵の子どもたちにより大切に保管されていたらしい。
そのため、非常に良い保存状態で戻ってくることができた。幸運なこととも言えよう。

獅子は首里真和志の人々にとって集落を災いから守り、五穀豊穣をもたらしてくれる存在だった。
旧盆や豊年祭で集落を周り、人々は獅子舞をありがたく、そしてよろこばしく眺めていた。
これが獅子の役割であり本領発揮している姿だった。

獅子頭を持ち去ったアメリカ兵、その子どもたちはおそらくこの獅子頭の役割りを知らなかっただろう。獅子頭は身体があってこそ魂を宿すのであり、それだけでは本領発揮とはならない。

獅子頭本来の役割を理解する人が不在だったためにこの獅子頭は、大切に保管されていたとはいえ78年間の間、その力を発揮することができなかった。

このアメリカ兵は何を思って獅子頭を持ち去ったのか。今となっては知る由がない。
かっこいいと思ったのだろうか。日本ぽいと思ったのだろうか。
しかし、彼は獅子頭本来の役割を理解していなかった。彼には獅子頭を活かすことができなかった。
宝の持ち腐れだと思ってしまう。

相応しい者の元で力を発揮する、本領発揮。
この獅子頭で獅子舞を見てみたい。


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