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読書感想文:『母という呪縛 娘という牢獄』

旦那さんが新聞記者をしているので、
彼から勧められる本には社会派のものがあります。

今回、強力に勧められたのが
『母という呪縛 娘という牢獄』。


とても重く苦しい読書の時間でしたが、
若い記者さんのエネルギーに一気に読まされてしまいました。

本書は、2018年、
娘が母を殺害しバラバラにして遺棄した事件を、
当時、
共同通信社で記者をしていた齊藤綾さんが丹念に取材したものです。

私自身、
旦那さんにこちらの本を勧められるまで、
うっすらとしか事件のことは覚えていませんでした。

けれど、詳細を読むにつれ、
母が望んでいる娘の学歴への執着、
その毒親ぶりと
娘を精神的に支配していく様子には
想定の上をいく凄まじさに胸が潰れそうでした。

取材対象が主に娘のあかりさんだけなのを差し引いても、
目を覆うばかりの言葉の暴力に
誰かがこの親子関係に気づくことができなかったのか⁉️とも感じました。

世の中には、
愛するが故にネガティブな言葉や態度を投げかけ、
相手がそれに反応することによって自分の存在価値を確認する人が少なからずいると
私は思っています。

そして、
そういう人は
自分の正しさを何も間違っていないと信じ、
自分の思う通りにならないことは
全て周りや相手のせいにして
言ってはいけないことを言ってしまうのです。

本書では、
母と娘の双方に精神疾患があったのであろうと思われます。

母娘の2人だけの孤立した世界にいたことも事件を呼び寄せてしまったのでしょう。

生きていくには、
居場所がたくさんあることが救いになることが多くあります。

そして、
今いる場所の扉を開き、窓を開き、
風通しをよくしておくことが
視野が狭くならないようにするコツだと思います。

あかりさんが塗り重ねた嘘を告白する気持ちになった場面では、
胸に迫るものがありました。

そのきっかけは、
他者に理解され寄り添ってもらったことと
見返りのない惜しみない愛情でした。

終章で、
あかりさんが
この世には色々な居場所があり
様々な境遇の人がいるということ、
そして、
差し伸べられた手やあたたかい言葉を
素直に受け取って良いのだということを
分かり始めた描写に
微かな光を見ることができました。

彼女が負った心の傷は生涯なくなることがないでしょう。

けれど、願わくは、
彼女に心の平安が訪れますように。

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