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書き出し小説

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書き出し小説 No.2

真新しいノートを前にして、心が躍る。
何も書かれていないノート。これから何でも書いていける。
わたしはペンを持ち、最初の一文字を刻む。しかし、そこに記されたのは、ひらがなでも、カタカナでもなく、ただの「・」だった。
真っ白なのはノートじゃない。わたしの頭、そして、わたしの心。
わかってはいた。
わたしにあるのはただ「書きたい」という想いだけ。
人に伝えたいことや自分の主義主張などまるでない。心とき

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書き出し小説 No.1

『俺の人生に関わらないでくれ』
その言葉を最後に、彼の人生から私は消えた。
私は汚点。営業成績トップ、我が社期待のエースである彼の輝かしい人生にあってはならないシミなのだ。
「もう、消えたい…」
彼に別れを告げられて一ヶ月。かろうじて仕事には行けるようになったものの、休日に出かける気になれず、ただひたすらベッドの中で丸くなってばかり。外は晴れているのか曇っているのか。そんなのわからない。関係ない。