紫乃羽衣

最近は、随分と暖かくなってきた。
朝のニュースでここ数日はずっと桜の話題をしている。
他の国を見回したって、情報番組で桜の開花をこれだけ長期間取り上げるところなどないとおもう。

今年はいつまでも寒い日が続いたりして例年よりも咲く時期が遅れているらしく朝の準備をしながらテレビを見て、「今日こそはきっと！」と言いながら、出かける君は楽しそう。

友達ができたと言っていたね。

私の血を受け継いでしまったせいか、もとより学校があまり好きではなくて、小学校の時から泣きながら行っていたね。泣くほど嫌なら家にいればいいのに、休んでもいいと言っても君は絶対に行くって言いながらドアを開けていくんだ。この変な強情さは、誰から受け継いだのやら。

でも、その君があの日は初めて嬉しそうに家を出たね。
本当に嬉しかったよ。

あれからもう一年が経とうとしているね。
同じクラスで、同じ部活で、テストの成績で勝ったり負けたりしていたらしい。その度に、「次こそ勝とう」と息巻いて家を出ていくよね。
君は知らないかもしれないけれど、あの日から少しずつ表情が豊かになって学校のこともたくさん話してくれてね、嬉しいのと、ごめんねっていう気持ちと、ありがとうっていう気持ちと、なんて言ったらいいのかわからないけど、胸が暖かくなったんだよ。

また一つ、学年が上がって少しずつ大きくなる君が頼もしいようで、
私はどこか少し寂しくなるようで。

今だから

けふこそはさくらめと笑む君の瞳や
雪もうち解く暖かなりけり

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